うた魂♪


合唱部に所属する女子高生かすみ(夏帆)は、憧れの生徒会長から「歌っている姿を撮りたい」と言われ有頂天に。しかし映っていたのは、自身の抱くイメージからはほど遠い、彼いわく「産卵中のシャケみたい」な顔。ショックを受け部活動を辞めかけるが、権藤(ゴリ)率いるヤンキー高校合唱部の歌に感動し志を新たにする。



オープニングは海辺に独り立つ主人公の後ろ姿。「普通でない」かんじがする。そしたらやっぱり普通ではなく、イヤホンを付けて自己陶酔しながら歌っている。でもその「普通でない」かんじは、作中他の行動をしているときでも同じ。そういう子なのだ。
次いで、北海道の朝の大地を走るバス。車内の「一般」高校生が、バス停に列を成す、ゴリ率いる不良学生の群れを見て「やべ〜」とつぶやく。一時間に一本のバス路線、毎朝乗り合わせているはずなのに、このセリフはないだろうと思い、先行き不安になった。
しかし次第に面白くなってきて…それはひとえに合唱の素晴らしさのおかげ。ゴリたちが歌う「15の夜」には涙がこぼれそうになった。尾崎豊っていつも一人で歌っていたけど(岡村ちゃんとの共演は思い出深いけど)、合唱曲にしてもこんなに力があるなんて、メロディがいいんだなあと思った。


そうは言いつつ私は、「合唱」に偏見を持っている。主人公の所属する合唱部のパフォーマンスを観ても、友達にはなれそうにないな…という思いしか浮かばない。理由を考えながら観ていたけど、よく分からなかった。でも彼女達が喫茶店エノケンの曲を歌う場面は良かったし(「ザ・コミットメンツ」のワンシーンを思い出した)、あの、皆で林立しているかんじ、揃えた衣装、などが苦手なのかもしれない。


主人公を演じる夏帆ちゃんは、例えば自分を敵対視する同級生女子との会話のあと教室を出て行く場面の表情など、演技が分かりやすく上手い。温室?の中で「私のこと嫌いなままでもいいよ、でも謝りたくて…」と告げるシーンも良かった。
件の女子は両側にお付きを従えて登場したので、ハリウッド青春映画のカーストものみたいのが見られる〜と期待したけど、大した女王様的描写もなく、いつも眉間にしわを寄せており辛気臭く、観ていてあまり面白くなかった。ゴリ達があれだけマンガぽくデフォルメされてるんだから、高校生としては有り得ない格好をさせるとか、30代のそれっぽい女優を出すとか、もっと弾けてほしかった。


合唱部の顧問を押しつけられた薬師丸ひろ子は…私の苦手なフォークロアぽい服装なんだけど…いつもと同じなんだけど、良かった。代用教員の彼女は、終業式の壇上で「ふつつかな『女』ですが…」などと口にし、部の練習中はコンパクト片手に化粧直し。つまり「ずれている」人なんだけど、夏帆ちゃんとしかからまないので、その「ずれっぷり」があまり味わえず勿体ない。
夏帆ちゃんの祖父である間寛平がいつもショートパンツを着用しているのは、やたら筋肉質なため異様な感じを受けた。


ちなみに一番印象に残った…というか気に入ったのは、尾崎豊の曲を弾き語りする「女神」の姿見たさに、ゴリが人混みの後ろでぴょんぴょん弾ねる足元を映したシーン。可愛らしかった。


観終わったら無性に尾崎豊を聴きたくなった。こんな日が来るなんて(笑)
74年うまれの私は、彼が活躍した頃は小学生から中学生。詞を毛嫌いしつつ、アルバムはほとんど持っていた(当時(の自分?)とはそういうものだった。とりあえず聴く)。いちばん懐かしいのは85年のアルバム「回帰線」。「群衆の中の猫」という曲が好きだった。