マリー・アントワネット


どこで観るか迷ったあげく、有楽町マリオン日劇へ。お弁当持参者が多いのが、匂いさえガマンすれば、いかにもで楽しい。隣の初老の夫婦は、上映前にはおかずパンを食べながらしきりに語らっていたが、中盤には寝ていた。ちなみに私も(寝不足もあって!)最後うとうとしてしまい、宮殿のガラスが民衆の石で割れる音で目が覚めた。



オープニングはGang of Four「Natural's not in It」…この曲を超満員の日劇で聴いてるってことに、すごく違和感を感じて、面白かった。このへんの音楽には疎いんだけど、Radio Deptは好きなので、狩りのシーンで犬が走ってるのに「Pulling Our Weight」が流れたのが嬉しかった。
動物といえば、馬車がやたら正面から撮られてて、真正面からの「馬の走る図」って普段見慣れてないから、妙なカンジがして可笑しかった。とくにオーストリア側の馬は無骨だ。


故郷オーストリアを旅立ち、寂しい林道を馬車で抜け、パリに到着し、ヴェルサイユ宮殿に目を見張る…オープニングからこのあたりまでが、一番心に残った。国境で祖国の衣服を全て脱がされるのは、漫画「ベルサイユのばら」でも印象的なシーン。ちなみに漫画読みとしては、ルイ15世が「天然痘」に罹るとこで、あのコマを思い出してしまい、ちょこっと覚悟してしまった(子どもの頃、べるばらで怖かったのは、そのシーンと、アンドレの目が見えなくなるとこ…)
恋人のフェルゼンがほんのあれだけの扱いというのも面白い。外地に赴いた彼を想ってパーティを抜け出し、自室のベッドに戻ったマリーの脳裏に浮かぶ「崖っぷちで馬にまたがるフェルゼン」には爆笑してしまった。


キルスティンの白い肌はすごく良かった。裸の背中にゴツゴツがあるのが、個性的で目に付いた。
彼女のマリーはきついコルセットをしない。アレコレ言われて部屋に戻って泣く場面で、うずくまると、ニッパーの中に上半身が埋まってしまう。


女のコは、見たものしか見ない。だから、実際に見ていない、宮殿の外の革命は、映画には出てこない。
女のコが見るのは、窓の外。私だって、年齢的には女のコじゃないけど、電車に乗ったら、ドアのガラスに手を付いて、外を眺める。マリーも馬車から外を見る。オーストリアからパリまでの林道。仮面舞踏会の朝帰りの川辺。でも、最後には、もう見ない。