スパングリッシュ


スパングリッシュ [DVD]

スパングリッシュ [DVD]


「映画」の面白さってこういうことだと思う。


話は、スパニッシュのクリスティーナが、大学入学願書に添える小論文において、尊敬する「ママ」のことを語るという体裁。メキシコから渡米したママのフローラは、娘をしっかり育てるために、ロサンゼルスのお金持ち一家のハウスキーパーになった。ゴタゴタの多い家庭では、英語が話せなくても…というわけにはいかず、彼女も教材を買い、英語を学びはじめる。
(「ラブ・アクチュアリー」でも、全然英語を話せないハウスキーパーが作家のコリン・ファースのとこに来てたけど、日本から出たことない私にはわかんないけど、そんなもんなんだろうか。会話できないなんて、つまんないし怖い)



誰かが誰かに、実生活において、フィクションにおいて、その他の場合において、心動かされる、その条件も内容も様々だけど、「私→フローラ(クリスティーナのママ)」については、何ひとつ発生せず、つまり何の興味も持てず、ただそのケツアゴだけが気になってしまった。
他の登場人物皆の気持ちは、陳腐な言い方だけど「ワカル」のに、彼女だけがすごく遠く感じられて、話の結末も、クリスティーナ、母親にまるめこまれてるよ〜と思ってしまった。


一家は奥様…というより女主人のデボラ(ティア・レオーニ)と、その夫でシェフのジョン(アダム・サンドラー)、娘と息子、デボラの母親のエヴェリン(クロリス・リーチマン)。
とにかくデボラが最高で、一緒に暮らしたくはないけど、ああいうの、尊敬してしまう。毎朝「どいて!どいて!」と近所をジョギングし、ダンナと話しながらもトレーニングを欠かさない、会社つぶしちゃった専業主婦。


彼女と母親の対話シーンもとても興味ぶかく、どういう育て方したんだろうと想像してしまう。ちなみに、浮気を白状したためにダンナに出て行かれてパニックになるデボラに対して母親が取る言動はとても合理的で、私もいつも、ああいう話し方をするよう努めてる。
一方ジョンは、デボラの母親が言うとおり、確かに「良い夫」だけど、魅力を感じない。冒頭、イラつくデボラの胸を突いてなだめたことでよけい彼女の怒りをかうという「笑える」シーンがあるんだけど、私は怒ることもできないから、ああいう事態になったことないけど、ああいうことする男、大嫌い(笑)それに、フローラが後に「人生最高の会話だった」と言う彼とのひと時も、私なら全然楽しくない。でも、唇の前にほっぺにキスされるのは好き…
(でも「自分なら」という見方はさておき、このシーンすごく良くって、「床に足をつけたら…」というのが上手すぎる!)


互いに「こんな異性がいたなんて…」と惹かれあう、ジョンとフローラとの関係は穏やかだ。もし「その後」があってもやはり穏やかだったろう。でも、人間同士の関わりによって、何かが生まれる、変化する、というようなことはないだろうなあ、と思わされる。うまれりゃあいいとは思わないけど。


アダム・サンドラーの役柄は、タイムズ紙に「アメリカ随一」と称される一流シェフ。デブとまでいかなくとも恰幅のある身体つきが、結構はまってた。夜中に作るサンドウィッチの美味しそうなこと。フローラとの話し合いで冷めちゃうんだけど。
それにしても、「自分のために生きた」「(娘いわく)男と寝まくった」、そして今は快適なおウチで昼からお酒を飲んで暮らしてる、おばあちゃんが一番羨ましいかも。娘婿の「口」にキスするくらいの楽しみはあるし(笑)


それから、トーマス・ヘイデン・チャーチ!オープンカーで登場したの見て、笑ってしまった。デボラの「浮気相手」の「不動産屋」というのが、ピッタリすぎて。当たり前だけど順当に老けていた。


ちなみに、英語が話せないママのために、娘のクリスティーナが雇い主との間に入って同時通訳するシーンが何度も出てくるけど、最近は、たとえばうちの近所の公立小学校なんかでも、アジアの他国からやってきたお母さんが日本語を知らず、懇談会などで娘が先生の言うことを通訳するという場面は、結構見られるそうです。