ここんとこ毎日サントラ聴いて、楽しみにしてました。観たら、やっぱりすごく良かった。
ちなみに以下の感想は、観に行く予定の人は読まないほうがいいかも(ネタバレ…もあるけど、新鮮な喜びを奪ってしまうから)
60年代、アイルランドのちいさな村。諸事情あって教会に置き去りにされた赤ん坊は、神父さま(リーアム・ニーソン)の手で近所に預けられる。
女性の格好やキラキラしたものが大好きで、変わり者として浮きまくる彼…パトリック“キトゥン”ブレイデン(キリアン・マーフィ)は、やがてスーツケースひとつで町を出た。放浪の末ロンドンにたどり着き、街に呑み込まれた「幻の女」、女優のミッツィ・ゲイナーに似ているというほんとうのママを探し求める。
キトゥンの目は、とてもまっすぐである。ふつうの人はそんなふうに見つめないから、「お前、ヤクやってるのか?」なんてあらぬ疑いをかけられたり。
初めての男にむかって、そのまっすぐな目で、彼は言う。
「もしも私が病院に運ばれたら…あなた、迎えに来てくれる?」
そこには、駆け引きも、拗ねもいじけもない、ただ「好きな人に伝えたい」思いがあるだけ。
数年後、クラブで抱き合って踊る男に、彼は言う。
「あなた、内緒で犬を買って、私を喜ばせてくれる?」
今度は、目は肩越しに見開かれたまま。たまにはそんな夜もある。
初めての男も、それからの男も、ほんとうに望むことはしてくれない。キトゥンもそれは重々承知。「わかってたの、バラもチョコレートも、口先だけだって…」でもしょうがない。ラブソングを聴けば心は躍るし、故郷には大事な人たちがいる。楽しくいかなきゃ。
冒頭いきなり、吉田戦車の「伝染るんです」を思い出しちゃったんだけど(読んでた人なら絶対連想するはず・笑)、その他心に浮かんだことがいくつかあって、まず、唐突だけど、ロザンナ&パトリシア・アークエット姉妹。手品の助手というのが、「マドンナのスーザンを探して」でのロザンナの役柄とかぶったのと、キトゥンの実家の部屋が、「リトル・ニッキー」でパトリシアが住んでたところに似てるように感じられて。都会と田舎だし、実際には全然違うんだろうけど。
それから、「Fairy Tale」の章でキトゥンがちいさなおウチをみつけるシーンは、大島弓子の「つるばらつるばら」。「女」として生きる男の子が、夢で見た家を探し続ける話。そういや最近、性同一障害の男の子が、女の子として小学校に通ってるという話があったね。そういうニュースはやはり嬉しいものだ。
キトゥンは多くの男と出会うけれど、手品師(「クライング・ゲーム」等のスティーブン・レイ)とのエピソードがいちばん印象的でした。
カフェで拾われたキトゥンが、初めてショーの「手伝い」をさせられる場面、私は胸がえぐられそうになったんだけど、彼はその仕事をこなし続ける。手品師もわるそうな顔ひとつ(少なくとも作中では)せず、二人はそれなりに愛し合っている。
「おれが好きなのは、お前みたいな女だ」
「私、女じゃないのよ」
「わかってる。だから言ったんだ、girl like youって」
そう、人は自分にとっての「それ」を愛するんだ。
音楽も盛りだくさんで楽しかったです。映画って、音楽が流れて…それが、俗っぽい曲、いつかの流行歌でも…映像があって、それだけで面白いんだよなあ。今回のテーマ曲「シュガーベイビー・ラブ」は、「ミュリエルの結婚」の「ダンシング・クイーン」を思い出した(たしかこの映画でも「シュガーベイビー〜」はお約束で使われてたはず)。
時代の流れとともに、ロックも変わってく。そうそう、当時はあんなむさい男でも、グラムロックのカッコしてたんだよなあとか(笑)腹肉出してさ。
外は雨、相手はあの人、クルマの中で「Feeling」が流れるシーンは、「チャーリーズエンジェル・フルスロットル」でドリュー・バリモアが聴く「Livin' on A Prayer」を思い出しちゃった(笑)
サントラには入ってなかったけど、私の大好きな「Me and Mrs.Jones」が流れたのも嬉しかった。歌詞だけ見れば、ありがちな不倫の恋の歌だけど、その場の状況とちょこっとかぶっちゃって。
ぼくらは毎日、同じカフェで会う
6時半、いつも彼女はそこにいる
(中略)
そろそろ別れの時間だ、心が痛む
彼女は彼女の、ぼくはぼくの道をゆく
でも明日、ぼくらはまた会う
同じ場所で、同じ時間に
最後に、子どもの想像は、意外と当たるものだ。
リーアム・ニーソンはまたしてもいい役だったなあ…
(でも神父さまの朝食は、不味そうだった!油の海に浮かぶウインナー…)
- アーティスト: サントラ,ダスティ・スプリングフィールド,ギャヴィン・フライデー&シリアン・マーフィー,T・レックス,ギャヴィン・フライデー,ザ・ルーベッツ,ジョー・ドラン,ハリー・ニルソン,ドン・パートリッジ,ボビー・ゴールズボロ,パティ・ペイジ
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