Totem


東京国際映画祭にて観賞。2023年メキシコ/デンマーク/フランス、リラ・アヴィレス監督作品。

母と娘がはしゃいでいると外から「公共のトイレなんだから」と声をかけられるオープニングにうちじゃないのかと思い、タイトル後の続きになるほどこれは7歳のソルがよそで一日を過ごす話なのかと見ていたら、終盤パーティのいわば裏でパパにやっと会えママも用事から戻ったところで、彼女にとっては大好きな二人と過ごす場がうちなんだ、冒頭もうちみたいなものだったんだと気付いて胸が熱くなった。他の身内には流されてしまう動物の話を聞いてもらい、「右か左か」といういつものアレで盛り上がる。全編通じて切り取りが狭く全体が掴めないのもさもありなん、場所がどこだかは関係ないからだ。

毛染めや経血カップに筋肉刺激パッドといった叔母達の日常、「(掃除を)弟にやらせるとか言って結局ママがやるのはマッチョの再生産」などの従姉のセリフ、癌患者と暮らす家の看護師への給金も滞るほどの金銭面での困難、祖父の「声」を取り上げてなされる少女と幼女の遊び、女達によるあらゆる事物の描写の後で聞くパーティの席での友人女性の話に、メソアメリカでは時間は循環しているように見えて元に戻るんじゃなく一段高いところに上るんだと教えられる。ひととき「うち」だったあの場のその後に映画が終わるのは、ソルの成長を表しているのだろうか?