ザ・クリエイター 創造者


冒頭に出る「『ニルマータ』とはAIが崇拝する彼らの創造者」云々との文に、AIにとっての崇拝とは何だろうと思うも、見ているうちにこの映画には彼らの宗教の誕生が描かれているようだと分かってくる(結果的にあれは世襲制…になるのだろうか)。ともあれマヤ(ジェンマ・チャン)の父親の言だという「人間もAIも同じ」が一番の「おことば」なんだろう、だから「アルフィー」の目的は人間を排除することではなく「戦争をなくすこと」なんだろう。ジョシュア(ジョン・デビッド・ワシントン)が続けて言う、子どもを育てるなら私は君、君は私、というのも肝なんだろう。

予告からは内容が全く分からなかったので、そうか潜入捜査ものなのかと見始めたら、これは「愛してしまった」ことに始まる一人の男の壮大な旅の物語だった。妻に会いたい一心の利己的な道が、自身が名付けた子とゆくうちにいつしか大義と重なる。私達はその道中に(ニュー)アジアの戦禍に生きる人々を見る。「5年後」の冒頭にロサンゼルスのグラウンド・ゼロで躊躇なくAIを始末していた彼、怯え悲しむ同僚を「殺したんじゃない、オフにしただけだ」と諭していた彼が終盤かの地に帰って来た時には「人間もAIも同じ」に辿り着いている(AIの見た目を人間のようにする理由が私には分からないが、ここではそれは「そういうもの」である)。

クレジット三番目の渡辺謙のセリフの半分ほどは日本語で、仲間はベトナム語で喋るのを互いに理解している。そういう場も現実に確かにあるけれど、このことに代表されるようなごちゃまぜ感が知性や優しさというより単なるお気楽を感じさせなくもない。「アメリカ人から逃げろ」という話においてアリソン・ジャネイ好演の大佐率いるノマド軍が備えている特攻ロボットが出発前にお世話になりましたというようなことを言うのもジョークなのか何なのかよく分からなかった(いや、全体的には楽しく見たんだけども)。