Swallow スワロウ


テレビのCMの「輝いて愛されよう」とか何とかいう宣伝文句に、男性にハグされている女性の笑顔。これがハンター(ヘイリー・ベネット)が世界から受け取り信じているメッセージである(夫も歯を白くするための努力をしているが、立場が違えば意味は異なる)。夫のリッチー(オースティン・ストウェル)の初対面の同僚に「寂しいから」とハグを求められた彼女は、躊躇の後にそれを許し、CMと同じ構図ながら暗い顔で、それでも「ありがとう」とさえ言うのであった。

作中ハンターが初めて怒りをどうにか口に出すのは、自身の異食症を夫が周囲の皆に言いふらしていたと知った時(このことにつき夫に感情をぶつけるのにあんな手しか使うことができないのが悲しい)。どこかおかしいと思っていたら報告を命じられていた精神科医、つきっきりでいることを命じられるシリア出身の看護師、一族によって彼女は全てを見られ、その上で管理されている。となれば異食症の所以は、体内だけが自分の支配できる領域だからであろう。尤も本作は「異食症」や「妊娠」に寄り添ってはいない。そういうあれこれを小道具にしてうまく物語っているタイプの映画である。

初めて異物を飲み込んだ翌日のトイレシーン(直接映しはしないけど、長手袋をはめうんこを潰してガラス玉を探す)にえっ出るの、いや出すの?と思ったものだけど、この映画にはトイレが幾度も登場し、「出す」行為が全編通じて語られる。ラスト、便座から立ち上がったハンターの後に……しかし自身で決めたことを実行した彼女は意気揚々と去り、残ったカメラが入っては出てゆく女性達を映し続けるエンディングが実にさわやか。前にも書いたけど、さわやかって「息ができる」ということである。