ダイバージェント FINAL



ダイバージェント・シリーズって、特にこの三作目は、登場人物がVR体験をするのを映像で見るというのが主眼なんだけど、自分自身がVR体験をする時世にそれって面白いのか、と思いもする(そういう部分はむしろ原作小説で読んだ方が楽しいのではと思う)


一作目からの「かっこいい男の子に恋をする」要素が煮詰まりに煮詰まった結果、テオ・ジェームズ演じるフォーの「王子様」ぶり(「イケメン」ではない)が前人未踏に近い領域に。シャイリーン・ウッドリー演じるトリスを抱えて垂直の壁を駆け上ったり(ワイヤーはあるよ・笑)、彼女だけが偉いさん(ジェフ・ダニエルズ)に呼ばれたとなれば外の階段をやはり駆け上って発つのを見届けたり。二人きりになるや抱き合ったりキスしたりするというオールドファッション描写もまあ納得、くっついたら離れられなくなるお相手だ。


「人間をカテゴライズするなんて(でもって、どこにもカテゴライズできない者を異端者として迫害するなんて)」という物語においてこんなことを思うのは罪深いけれど、「pure」なトリスに対し、教官であった、完璧なフォーが「damaged」であると分かった時から、新たに彼に野卑な魅力が加わる。いけないことだけど、これって「完璧な美女の肉体の一部に損傷があることで余計に魅力が増す」みたいなやつだから(そんな映画ならあるから)、いいよね。


メインキャストとして、完璧なフォーの下に、ものを知っているが臆病な、あるいは知っているがゆえに臆病な兄のケイレブ(アンセル・エルゴート)と、出てくる度にむかつくピーター(マイルズ・テラー)。しかし、自分達を助けた組織に「いつも君達を見ていた」と言われれば「気持ち悪い」(そうだそうだ!)、仲間を裏切り一人だけいい目を見ようとする(そういう気にもなるかもね)、次第にそんな彼がこのままこんなふうに生きていける世の中ならと思う。彼こそがこの映画においてはテーマに沿った人物かもしれない。