スウィート17モンスター



主人公ネイディーンの小学生の頃の回想に、登校時に車から降りない彼女を母親(キーラ・セジウィック)が何とかしようと無理強いする場面があるのに、なぜ父親はそうせず母親はそうするのかと思っていたら、中盤、母親には出勤時間が迫っていたからかもしれないと推測できる。
高校生になったネイディーン(ヘイリー・スタインフェルド)は、車どころか「免許も持っていない」(いわく「試験に落ちた」)。そのことが実際にどうというんじゃなく、運転するようになれば乗せる側にも事情があると理解する切っ掛けになるところが、分からないまま17になってしまった。そんな彼女が、映画の最後には自転車で世に漕ぎ出す。うんと時間が掛かる距離なら、うんと早起きして。


ネイディーンに「車を降りなさい」とはっきり諭すのは、ブルーナー先生(ウディ・ハレルソン)である。親だけじゃなく教師もまた、子どもの成長に大切な役割を果たす。授業での言い間違いを(次の授業時に!)指摘する彼女に「揚げ足取りは人生の無駄だと思わないか?」と返すのは笑える応酬のようだが、当人は真面目に受け取り「思わない」と言ってのける。先生は「成長を願う」。実はこの物語はここに要約されているのだった。母親も実に真っ当なことを言うが、娘には通じない。先生の妻の言う通り、年月が解決する部分も大きいのかもしれない。
旅行前にドレスからの二の腕について聞く母親への心無い返事、兄ダリアン(ブレイク・ジェナー)にむかつくことを言われての「頭がでかくてバランス悪い」、あるいは憧れていたニックへの「古い車」。ダリアンの言う通り「正し」けりゃいいってもんじゃない、意味が無いように思われる「Have a good day」も大事なんだと、ネイディーンは最後に気付く。いや、見えていた向こう岸に飛び移れたと言うべきかな。


本作では、洗濯物が常に男子と共にある(いずれも親の留守に扱っている)。それはネイディーンが日々の生活においていかに甘やかされているかをこちらに伝えるためのものだろう。兄がスムージーを作り妹はパンとピーナツバター、というのも(ヘイリー・スタインフェルドの容姿が全然「いけてな」くないから目立たないけど)「昔」と違って、でもカウンターというより当たり前のように感じられていい。
ダリアンが「冷蔵庫に成績表なんて貼って」いたのは、遠方への進学につき母親が何とかしてくれるかもと期待をこめていたのかもしれない。しかし実現はしなかった。常に家庭を背負っている彼が、犬のおしっこを拭いている時にふと現れて片付けを手伝うクリスタ(ヘイリー・ルー・リチャードソン)に惹かれるのも分かる。二人のこの「改めての出会い」や「翌日に顔を合わせての会話」はとても素敵で、「ラブシーン」以上にときめかされた。