ザ・ブリザード



1952年に起きた、アメリカ沿岸警備隊によるタンカー救出劇を映画化した作品。
2D字幕版を観賞、まずは全く酔わなかったのが嬉しい。


真っ二つに折れたタンカーにおいて、ケイシー・アフレック演じるシーバートが他の乗組員には思いも寄らない案を口にする場面で、あっこれは潜水艦ものによくある「顔を合わせない二人のプロが互いの考えを読み合う」というアレが味わえるのかと期待するも、そういう話じゃなかった。むしろ全然そうじゃないところがこの映画の特徴と言える(尤も「実話」だそうだから、単に実際の通りってことなのかな)
主人公バーニー・ウェーバークリス・パイン)の婚約者ミリアム(ホリデー・グレンジャー)は、詰所で海の男に「外海に出れば死ぬ」と聞かされ、自分は「バーニーなら出られる」と思う、だからクラフ司令官(エリック・バナ)に「彼を呼び戻して」と唯々しつこく迫る…のは理に適っている。しかし能無しの司令官や車の事故という壁に阻まれて(彼女にとっての「前」へ)進めない。その一方でバーニーが砂州を越えている。タンカーの乗組員は救助に関する情報を得られず、救助隊もほぼ偶然にタンカーに辿り着く。顔を合わせて「ラッキーだった」と冗談を言い合うが辿り着くまでにはそれぞれ死闘があった、その両者と、陸地に居て何も掴めないミリアムが最後に同じところに集まるというのがちょっと面白い。


詰所の男達の「お前に結婚を申し込んだ女ねえ」、バーニーの友人の「他の娘さんや奥さんはこんなことしない」などのセリフから、ミリアムは「女は待つ身であるべき」という常識をものともしない人物として描かれていると受け取った。「今」が舞台なら(「女の職場」じゃない)仕事を持ち「活躍」も出来るけど、「昔」を舞台に「男に従うだけの女じゃない」ことを表現しようとするとああなるんじゃないかと。しかし終盤、漁師の夫を亡くした女性を手伝い始めるところでよく分からなくなった。ミリアムも今後は、それこそあの女性がアドバイスするように「無線は聞かない」妻になるということを意味しているのだろうか?
クリス・パイン演じるバーニーときたら、登場時にはこんな男、全宇宙の女が奪い合いだろと思わせておいて、次第に勝手も染み出てくるのが面白く、例えばミリアムが「もう踊りたくない」と言うのをなだめて続けさせ「君、踊れるじゃないか」だなんて、要するにこの映画自体が、最初から最後までそういう話なのだ。ミリアムのパートにやけに時間が割かれているものだから、冒頭の「それは嵐のこと、結婚のこと?」「嵐の話をしてるつもりだ」なんてやりとりのせいもあり、「この後」、つまり結婚という海に乗り出した後、彼女はどうするんだろうとばかり気になったけど、前述のように、この映画は「クリパのすることは『正しい』」という話だから、気にすることないか(笑)