新作落語お正月寄席



三遊亭わん丈「こじらせ親分」
古今亭駒次「We are イディオッツ!」
桂枝太郎クリスマスの約束
林家彦いち「実録新聞少年」
 (中入り)
柳家小ゑん「長い夜〜改2〜」
三遊亭白鳥「黄昏のライバル」
三遊亭円丈「紙飛行機イブ」
 (1/3・プーク人形劇場)


今年も初落語はこれ、円丈白鳥が揃う中日に出向く。(中日のうちでは)ここ数年で、前半に限れば一番の充実度じゃないかな。楽しかった。
数年前のこの会で初めて見たわん丈は、相変わらず姿も仕草もしゅっとしていれば喋りも上手く気持ちがいい。数年目にして初めて聞く「師匠」ののろけ話は、当人がまだ来ていないから出来るとのことだったけど、当の円丈の枕と内容が少し被っていたのが面白かった。枕でこの噺を作った経緯を紹介するというのも一門らしいといつも思う。
駒次さんは鉄道ではなく(笑)「応援団」の噺。わん丈は上手いなあと思ってたのが、次に駒次さんをが上るとやっぱり二つ目はより上手いなあと思わせられるんだから、落語会って面白い。
枝太郎は昼間にうちで見ていた「初笑い東西寄席」の中継先の末廣亭宮田陽・昇の前、すなわち「切られる」直前に上ってたそうで、その裏話が楽しかった。お正月の落語会なのに「ヤクザ」「クリスマス」ネタが何人も被る(笑)
彦いちの噺は「『あるある』じゃなく『なしなし』の実話、というより(新聞社の奨学金制度の)告発」。『あるある』じゃない噺、というのは新作において増えて欲しい分野?の一つ(「ステレオタイプ」によらない、すなわち不愉快じゃない笑いである可能性が高いから)。「ニュースメイト(新聞配達用のオートバイ)の音」が章を分けるのは、円丈の技(例えば「悲しみは埼玉に向けて」の発車のベルの音)を皆が取り入れてるのだとつい思ってしまう。


小ゑんは「新作落語の擬人化にも飽きがきましたよね、おでんが喋ったり(自身の「ぐつぐつ」)チーズと豆腐が話したり(白鳥さんの「豆腐屋ジョニー」)これはもっと壮大な…」と空と大地の会話により章立てされる噺を。「人間達」の会話の内容に「いつの時代だよ!」と思うも(でも昔のバージョンより確実に新しくなっている)、嫌じゃない、つい笑っちゃうよね。
初席に関する話が聞けるのもこの会の楽しみの一つだけど、喬太郎の代演として小三治とさん喬の間に出てきたという白鳥さんいわく「三三や菊之丞のような『若手』が正月にトリを取るなんて昔なら考えられない、今後二、三十年で落語会は大きく変わるんじゃないか」(何がどう変わるのか私には分からず)。「黄昏のライバル」は共演者を出す噺で、この日は彦いち。しかし彦いちの芸に対する突っ込みが無く残念だったのと、(特にこの客席じゃ)彼の「おかみさん」が無名というのは変だ(笑)
円丈はCDに入ってもいればナマでも何度も聞いたお馴染みの枕を振った後「この話も最近は受けない」って、その一言を付けるだけでまだ使えるとは(笑)「前に演ってぐだぐだになった噺に再挑戦」するも、まだしてもぐだぐだ、しかも「シメの言葉を考えてなかった」。でもこの日の演者の中で「こわさ」を表現できるのは円丈だけ、他の新作にはない満足感を得られた。