バトルフロント




「恐怖を感じるのは恥ずかしいことじゃない
 それでも平気なのは鍛えてるからだ」


オープニングタイトルの後、舞台は田舎の小学校へ。雲梯で一人遊んでいた女の子が、大事そうに被っているキャップを数人の男の子に取られて苛められる。彼女は「二度頼んだ」後、でぶちんのお腹に見事なパンチ。これにすかっとするのは、そこでの「悪」が実に憎々しいから。いい「導入」だなと思っていたら、この出来事は全編の「発端」、全てが繋がっているのだった。ここが面白いんだから、続く全編が面白いのも当然だ。


今年日本公開のステイサム映画なら「ハミングバード」の方がぐっときたけど、スタローンの作ったこの映画、面白かった。「アメリカ南部もの」「レッドネックもの」などの要素はあれど、それら独特の「色」が無いのが今時逆に新鮮。ただただ「やばいことが起こる」過程が丁寧に描かれ、その中で暴力が炸裂する。ステイサム親子が和やかに時を過ごしている裏で「悪者」(という程でもないんだけど)達が着々と…と思いきや、ステイサムの方もちゃんと「準備」をしている(たまたま相棒から情報を得たからだけど)とか、わくわくしちゃう。
ジェームズ・フランコが影でもって「悪魔」的に登場するのには笑っちゃったけど、ステイサム親子が車で橋を渡る下の川をゆくボート、ガソリンスタンドでの一件の後に保安官に車を停められる道端の背景の工場などが、わざとらしい程「美しく」撮られている。親子が馬に乗る情景に飛び散る、昔の少女漫画の花びらのような何かはやりすぎだと思うけど(笑)動物といえば馬の他に猫や犬も出てくるんだけど、ほぼ「出てくる」だけで素っ気ないのがスタローンらしく、ステイサムにも合っている。


出てると知らなかった、フランク・グリロも嬉しい。彼が姿を見せると画面がびしっと締まる。それに「悪役」がジェームズ・フランコだけだと、そりゃあよくやってたけど、ステイサムとの肉弾戦とか、出来ないもんね。
レイチェル・レフィブレ演じるスクールカウンセラーがとても魅力的。それが本人の魅力なのか作中の役柄なのか判然としないのは、冒頭の一幕での男の子の憎々しさが演技によるのか演出によるのか、一体何なのか「分からない」のと似ている。もっとも調べてみたら彼女の出演作を何本も見てるのに記憶が無いから、役柄なんだろう。父親を呼び出した教室で、娘のマディに「待ってて」の後のThank you、がいい。
小悪党…という程でもない中途半端な保安官も魅力的。ただの腹の出た爺さんだけど、抗えない魅力を感じた。これもまた、演じるクランシー・ブラウンのせいなのか何なのかよく分からない…って彼のことも、これまで何度もスクリーンで見てるのに特に惹かれたことがないから、これも作品のせいなんだろう。私にとっては総じて、そう有名じゃない役者さん達が魅力的に映る一編だった。