コッホ先生と僕らの革命




「君は学生時代を楽しんだかね?」
「いいえ、だから教師になったんです」
「我が国の今日は、楽しんでこなかったからこそあるのだ」


オープニング、ヴィルヘルム1世と並ぶ「体操の父」ヤーンの肖像。バックには当時の体育の教科書?と、「服従と規律」による授業の様子。そこへドイツではど派手に見えるチェックの帽子にスーツ姿、ダニエル・ブリュール演じるイギリス帰りのコッホ先生が「時間に遅れて」到着する。「ドイツ初の英語教師」を迎える校長は、労働者階級の子を入学させているなどの「実験好き」だ。
規律命、反英感情の強い頃。公園でサッカーしてる子ども達を「後援会」が馬で追っかけて檻に閉じ込めるような時代だから、サッカーやるにも一難去ってまた一難。それをコッホ先生と子どもたちが、何かに導かれるように、妙なゴールを決めるように乗り越えて行く。
まあ、ダニエルに英語教えてもらいたい!と想像するだけでも楽しい(笑)彼と子どもたちのドイツ語と英語の発声がとてもきれいで、耳に気持ちいい。


時代背景はあれど、机に座らせて話すだけじゃなく、体を使って、例えば歌ったりゲームしたりすることで「分かる」ことってある。それは今だって同じ。終盤、教室で生徒が次々と立ち上がる場面には涙がこぼれてしまった。
生徒のうち主に描かれるのは三人、「プロレタリア撲滅」を唱える学校理事を父に持つ級長のお坊ちゃん、運動器具会社の社長の息子のでぶちん、工場で働く母親と二人暮らしのおちび。皆、まず面構えがよく見ていて飽きない。でぶちんがいつの間にかリーダー格になり、サッカーについて民意を取る際には英語で喋ってるのがいい。濡れた瞳のちびちゃんは大きくなったら意外とジェームズ・フランコになりそう(笑)
坊ちゃんの部屋に戦場のジオラマというか、兵士の人形があるのが面白かった。これに限らず、学校の備品を始め、美術や小道具が見応えあって楽しい。


コッホ先生の父親は戦死している。「お国の英雄、見習わなくては」と言う理事に対し本人は「死んだんですよ!」と声を荒げる。しかし、後に「社会の授業」として講義にやってきた義足の軍人に生徒が無礼なことを言うと「失礼はいけない、謝りなさい」と命じる。
彼の影響により、上記の三人の少年たち、いや終盤の描写によるとクラスの全ての男の子が「父親」を初めて「意識」し、ぶつかることになる。「誰だって父親は怖いものさ」に始まる、コッホ先生と坊ちゃんのやりとりにはぐっときた。近年の学校ものでいえば、「17歳の肖像」のキャリー・マリガンによる主人公とオリヴィア・ウィリアムズ演じる先生との場面に相当する感動…とは言い過ぎかな(笑)


こういう映画を観ると、運動というか球技が大の苦手の私としては、クラスに一人くらい、どうしたってサッカーに馴染めない子がいるんじゃない?と思ってしまうものだけど、よく出来てて面白いもんだから、そう気にならない。子どもや偉いさんまでが夢中になるサッカーの魅力はすごい、なにせ「解禁」されるものなんだからね(笑)