アステリックスの冒険 秘薬を守る戦い


モリエール」があまりに好みで、それ以降新作を楽しみにしてるローラン・ティラールの2012年作がソフトスルーでリリースされたので観賞。


アステリックスの冒険~秘薬を守る戦い [DVD]

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私は読んだことのない「フランスの国民的漫画」、「アステリックス」の映画化4作目。
ファブリス・ルキーニ演じるカエサルが、カトリーヌ・ドヌーヴ演じるコーデリア女王の治めるブリテンを討伐せんとするが、エドゥアール・ベール演じるアステリックスとジェラール・ドパルデュー演じるオベリックスのガリア人らの一行がそれを防ぐ。これを勿論全編フランス語で、「紅茶」やら何やらの「起源」を絡めて描くというのは、(円丈一門の)新作落語みたいだなと思った(笑)
映画史上最もゆるいんじゃないかと思われる攻城(?)戦、可哀相な目に遭う可愛い犬なんてのがまず見どころ。他愛ないお話だけど、カエサル元老院に浪費を責められたり、ガリア人とブリテン人が互いのイメージを言い合ったり、ブリテンの女性が「紳士」の同国男性よりもガリア人の男性に惑わされるが「フレンチキス」に飛び退いちゃったり、といった「小ネタ」が可笑しい。


カエサルがアステリックスに「なぜいつも邪魔する?」と言う場面で、原作を読んでいなくても「そういう話」なんだと分かる(なぜかここで突如スターウォーズのパロディが)。「これは『アステリックスの物語』なんだから僕は悪役じゃない」「これは『ガリア戦記カエサル著なんだから私は悪役じゃない」(カエサルの傍にはずっと筆記者が着いている)というやりとりが、「物語」の本質を何気に表している(笑)
カエサルとアステリックスは共に策士、双子のように同じ案を思い付くくらいだから(加えて「女好き」なんだから・笑)似た者同士。違うのは、この場面で明らかになる、二人の生きる目的。アステリックスは「よりよく生きたいだけ」。
「設定」などは殆ど原作に依るんだろうけど、監督のこれまでの作品「モリエール」「プチ・ニコラ」と「エピソードの抜粋によるオリジナルストーリー」という共通項があるだけじゃなく、「モリエール」同様、この映画も(この場合「ガリア戦記」の)「行間の創造」だということに気付いて面白くなった。それを好き勝手やってる映画っていい。


アステリックスとオベリックスが村長の甥を「男にするため」に預かっているという冒頭から、一緒に住んでることを揶揄され「殺してやる」と息巻く場面、「女」と見れば口説くアステリックスが、ある女性に心奪われたオベリックスに「女とままごと遊びか」なんて言う場面に、随分「女嫌い」な映画だなと思ったものだけど、もしかしたら「ガリア人」が「恋」より「友情」を取るという結末ってすごいことなんだろうか(笑)まあ「友情」を大切にするか否か、仲間が居るか否かがカエサルとアステリックスの大きな違いだから、この物語でそれが「重要」なのは当たり前か。