ソウルガールズ



オーストラリアにおいて、先住民族アボリジニは「動植物」と同じ扱いを受けていた。政府は彼らの中から肌の色の白い子どもを略奪、隔離していた。その子ども達のことを「盗まれた世代」と呼ぶ…と冒頭に文章が出る。物語は1968年のアボリジニ居留地から始まる。


昨年一番の長女映画が「三姉妹 雲南の子」(感想)なら、今年のベストワン候補の一つは本作だろう。
ボーカルグループを目指すアボリジニの三姉妹の上二人は、かつて「奪われた」従姉妹のケイを誘いに行くが、いまや「白人」となった彼女はすげない。二女シンシアは、特にわだかまりのあるらしき長女ゲイル(デボラ・メイルマン)に「殴り合ってでもカタをつけてよ」と言うが、その場は何となく解決に到る。しかし問題は無くなったわけではなく、彼女達「ザ・サファイアズ(原題)」が出向いたベトナムでの慰問ツアーの最中に表面に現れる。それは根が深く、相手を「殴」ったところですっきりしない。
そこに他人の手が入る。川べりに一人たたずむゲイルのところへ、マネージャーのデイヴ(クリス・オダウド)がやってくる。自分を救う言葉を聞き、ダンスに誘われた時に彼を見上げるゲイルの横顔の美しいこと。オレンジのリボンは羽ばたく蝶のよう。「君は○○だ」と決め付けられるのって、私なら嫌なものだけど、「自分の気付きによって相手を助けたい」という気持ちから出たものならそうじゃない、どころか感謝してもし切れない。クリス・オダウドは「ブライズメイズ」しかり、いい男の役でずるいなあ(笑)


サファイアズがベトナム入りする際に挿入される「当時の、実際の」映像には違和感さえ覚えたけど、終盤に爆撃から逃れたホテルのロビーでテレビから、また電話先で居留地の皆が集まって見ているテレビから流れるキング牧師暗殺のニュースはとてもしっくりくる。彼女達も見ている私も、「社会」に沿うように変化したということだ。