THE PROMISE 君への誓い



婚約と引き換えに金貨の入った袋を受け取り、「三年のところを二年で帰ってくる」とロバにまたがり山道を旅立つミカエル(オスカー・アイザック)の姿に「The Promise」とタイトルが出る。どんな約束だろうと見ていたら、それは「生き残ってやる」という宣言なのだった。


コンスタンティノープルの叔父宅に着いたミカエルは、「絶景ですね」「ここからは世界が見える」と会話を交わす。翌朝彼は、「世界」はそこにあるけれども何でもないというように踊るアナ(シャルロット・ルボン)と出会う。娘達の家庭教師である彼女いわく「授業の前に体を解放させる」。「別の世界」に出てきたミカエルの体を馴らすように、冒頭はダンスのシーンが続く。この「踊り」(あるいは「歌」や「詩」)の逆に位置するのが、「世界」がそこにあるならどうにかしてやろうという姿勢であろう。


アメリカ人記者のクリス(クリスチャン・ベール)は、パートナーであるアナに対し「君の絵が好きだ、夢を諦めないでほしい」と言う。この二人は互いの生き方が好きで、たまたまセックスし合えてしまう相手だから「男女の仲」でいるのだというふうに見える。だから終盤、ミカエルから妻子のことを聞かされたアナの顎をクリスが上から掴むなんていう、あの場面があんなにも美しい。その後に彼女が彼の腕に顎をのせ、見つめ合う、あの画、今年見た映画の中で一番好きだ。


二人の関係と一見逆に思われるのが、持参金付きの結婚で子をもうけるミカエルと妻マラルである。しかし人間同士、そこには愛が生まれるとこの映画は描く。あの川にて、「自分の子」のことが無ければ彼は彼女に(父親の後に、それよりも長く)すがって泣いただろうかと思ってしまったけれど、映画の終わりのサローヤンの文章に、そういうことじゃないのだ、あれは民族の未来なのだとちゃんと分かる。


マラルに「コンスタンティノープルは楽しかった?」と聞かれたミカエルは「別の世界だ」と返す。彼の精一杯の誠実さ、思いやりであろう。しかし本当に「別の世界」だろうか。この映画はそうではないと言い、追われた結果の「誰にも見つからない山小屋」など捨てること、死の行進よりも「モーセ山」を守ること、すなわち「反抗」を選ばせる。確かに「ホテル・ルワンダ」の監督の映画だなと思う。