メキシコ 地獄の抗争


メキシコ 地獄の抗争 [DVD]

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オープニング、メキシコの田舎町でママと弟と涙の別れをした一人の男…が、20年後にアメリカから強制送還される。「俺はメキシコ系アメリカ人〜」という陽気なメキシコ音楽をバックに国境からバスに乗ると、早速銃で脅され金を奪われる。実家に着いてみればそこはもう、自分の知る故郷ではなかった。
冒頭しばらくは「カルチャーギャップコメディ」の様相、それが「自分の国に戻ってきた話」なんだから面白い。どの国も、それなりの事情を活かした映画というのが作れるものだなあと思う。もしくは事情の方が作らせるのか。楽しげな現地の音楽ゆえにコメディに感じられる、というより、あれらの音楽はそもそもこういうことを歌ってるのかな、などと思う。


麻薬組織のボスが町に学校を寄付して称えられるのを見て、主人公は「新しい愛国者」だと言う。ボスの信条は「ヤンキーどもがこの国をダメにした、うちの間抜けな大統領も手伝ってる、靴を舐めてケツを差し出してる、それが資本主義だ、俺達は奴らに報復してるんだ」。もっとも息子の方はやれやれと「そんな政治家みたいなこと言って…ヤンキーは上客だよ」。
更に時は流れ、(ほぼ)ラストシーンにおける独立200周年記念式典と「2010年メキシコ万歳」のネオンサインの顛末の雄弁なこと。出てくる者達のやることなすこと、傍から見れば何の意味もない。花火のように、銃弾のように、一瞬の感情と行動があるのみ。作中流れる曲の歌詞のように「人生に意味はない」という話なのだ。
主人公の親友が「家庭と仕事は別」「麻薬の仕事をしないと子ども達の未来は無い」と言うのに「氷の処刑人」(感想)をちょっと思い出した。「周知」か否か、選択肢の有無の違いはあるけれども、舞台が違えばこんなふうになるんだと。