エリート・スクワッド


リオデジャネイロ州の軍警察に所属する特殊警察作戦大隊(BOPE)を描いた、2007年ブラジル作品。
劇場公開されずソフトが出た際に面白いと聞いていながら未見だったのが、シネマカリテのオトカリテ企画に掛かったので出向いて観賞。


エリート・スクワッド [DVD]

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冒頭から「映像酔い」してしまい、気持ち悪さが進行しないよう何度も目を伏せるはめに。それでも劇場で見られてよかったと思うのは、第一に、映画の「普遍的」な面白さを十分に味わえたから。オープニングのスラムにて、踊りながら集う男達、その横をのろのろ追い抜く警察車両、群集から突き出るライフル。以降ずっと、建物の屋上から「敵」を狙う姿、溝から「敵」に這い寄る姿など、変な言い方だけど、その「カタチ」って、西部劇でもありえるし、「近未来」が舞台の映画でもありえるよなあ、なんて思う。


登場時、賄賂を受け取る警察を監視しながら、妻からの電話でお腹の子の心音を聞き「大きな音だな」なんて言っているナシメント大尉(ヴァグネル・モーラ)。映画は全編通じて、「長年戦い続け嫌気がさして」いる彼の語りに彩られる。この作りにも、「名作」の数々を想起させる「普遍的」な面白さがあると同時に、「少なくともこの人、語ってる時点では生きてる」という安心感が得られる(笑)未知の世界でのガイドであるこの語りと音楽により、映画の楽しさがある程度保証される。


「俺のシマで勝手に駐禁を取るな」「賄賂回収のバイクが最優先」などのやりとりや、「犯人探しをするより犯罪を『動かす』方が楽だ」と遺体をたらい回しする警察の腐敗ぶりはコメディの域。後者は「踊る大捜査線」の映画版で笑いのためにでかでかとやっていた、「向こうの川岸に着けば向こうの管轄」というくだりと「内容」は同じ。そりゃあ「国民」はああいうの、見れば楽しいだろう。しかし選別キャンプにおいて、BOPEの敵は「警察」と「ギャング」だと明言されようと、映画は「テレビや新聞の報道を鵜呑みにする」一般人も「悪」であるということを強調している。ナシメント大尉は、銃撃戦の後にどこからともなく現れたマスコミの人間を追い払う。


朝目覚めてそのまま動かなければのたれ死ぬ。歩いてて足を踏み出すのをやめたらやっぱりのたれ死ぬ。たまにそういうことを考える。生き続けなきゃ死ぬな、「皆」よく生きてるなと。「普通」に生きていれば、余計なことを考えない限り無縁でいられるはずのこの感覚が、本作では、ナシメントがボルダリングの最中に指が動かなくなる場面や、キャンプで走ってる後ろからギラギラとライトを光らせたの車に追われる場面、マチアスがアレを持たされる場面なんかに染み出ている。「自分で何かしなきゃ死ぬ」という感覚が。


麻薬ディーラー一掃作戦を上司が説明する場面で、お仕事にはつきものの街の模型が出てきたのが面白かった(映画におけるこうした「模型」で思い出すのは、ジョニー・トーの「アクシデント」で殺人計画を練る場面)。車の整備のように、誰かが担当してどこかに作らせてるんだろうか?