セイフ ヘイヴン



日本における宣伝文句は「きみの秘密を知った時…(略)」。ヒロインのケイティ(ジュリアン・ハフ)が抱える問題、いや受けている被害を、たとえ作中の彼女がそう思っていようと、「秘密」なんて言うのには抵抗がある。でも「The whole family」を目指すコンサバにも程があるこの内容を、超ローカルな話でありながら「南部」どころかアメリカの匂いもしない、おとぎ話のような映画に仕立てたハルストレムのセンスはやっぱりいいなあ、と思いたい(笑)


ニコラス・スパークス原作×ラッセ・ハルストレム監督による映画二作(「親愛なるきみへ」と本作)には、ちょっとした共通点がある。子どもの驚くべき「自然」さと、ラブシーンにおける「飛び付き抱っこ」。前者はいつもながらとも言えるけど、後者については、もしかすると監督が、この作者の物語にはこれが必要だと思ってるのかもしれない。ハルストレムをいまだに追い掛けてる身としては、一体元はどんな小説なのか読んでみたくなった(笑)
ともあれアレックス(ジョシュ・デュアメル)の息子の釣り糸を垂れる憮然とした横顔から最後の涙まで、娘のレジでの歯抜けの笑顔から「パパがいなきゃ眠れない」はずが花火の夜にソファで眠ってしまうまで、全てが素晴らしい。加えてジョシュそのものといった錯覚をさせながらこれまでになく輝いている「アレックス」を見るに、役者の魅力が最大限に引き出されてるなあと思う。


ケイティとアレックスの初めてのやりとりは彼女のしゃがれた「Thank you」。「ありがとう」をキーに揺れながら展開する恋模様にも、冒頭と終盤のスリラーにも、全編に渡って引き込まれる。
ビーチにおいて、ケイティのビキニ姿にアレックスが目を奪われる、なんて場面が無いのがハルストレムの「上品」なところ。凡百の映画なら、彼の撮っている「写真」に入ってきてはっとしてカメラから目を上げる、なんて画がありそうだよね(笑)