トム・ハーディは、ベッドでの事前と事後の「ウム」の間にどんな声を出したのだろう?と想像するのは楽しいけど、それよりも、あのガイ・ピアースはあそこで、そもそも女の前で性器を出すのだろうか?とつい考えてしまう、そういう強烈さでもって、彼の演じたキャラクターが映画を支えてたのかなと思う。
邦題タイトルと共に「based on a true story」。全編に渡って、ディズニーリゾートで「無法者の子豚三兄弟」のアトラクションに乗ってるような感じだった。トム・ハーディ演じるフォレストが暴力で場を解決した際の陽気な音楽、彼が刺された際の悲しい音楽、ずっとそんな風で、心がどうというより、殴られる痛さ、刺される痛さ、撃たれる痛さばかりが伝わってくる。
最後に「昔」(本編の殆ど)を振り返るシャイア・ラブーフのナレーションにふと、事情は違えど、私だって戦争で暴力の中にあった者達の子孫なんだよなあ、彼らが昔を振り返ったらこんなふうだってこともありえるよなあ、などと思ってしまった。
物語の語り手は、シャイア・ラブーフ演じる三男ジャック。シャイアのこと長年応援しつつ、まだこんな役やってるのかとも思うけど(笑)はまってるからしょうがない。「やめてくれ」の時の泣き顔、「5ドル」の時の鼻をふくらませた顔!
映画は彼が「不死身」の兄二人の「運転手」として、夜も更けていく山道を商売に出掛ける場面から始まる。中盤、兄達じゃなく「相棒」と一緒に仕事に出向く際との、表情の違いが面白い。その相棒、少年クリケット役のデイン・デハーンの輝いてること、誰が見てもおそらく、かつてのディカプリオを思い出さずにおれないだろう。
ジェシカ・チャスティンとミア・ワシコウスカは私にとっては同じようなものなので、女はどっちか一人でいいだろと思ってたけど、対比も効いててよかった。鏡の中の、一方はもの思わしげな、一方は面白げな顔。
彼女達は共に男の庇護の下にある。そうでなければやっていけない時代。自らもぐりこんだマギー(ジェシカ)は、ポーチでガイに見られる場面で初めて、取り繕いようの無い恐怖を表に出す。生まれてこのかた「外」に出たことのないバーサ(ミア)の方は、「パパに知られたら…」という言い草が、次第に可笑しな決まり文句のように変わっていく。
話の内容として一番面白かったのはやはり、「復讐」のため一人で飛び出していったジャックの後を追おうとするフォレストとマギーの会話。おそらくそうだろうと思っていたことが露わになるのと同時に、「伝説」なんて無くたって好き、という彼女の気持ちが分かる。またこのやりとりから、ゲイリー・オールドマンによる「伝説の男」だって本当はどうだか、ということがちゃんと伺えるのもいい。