バーク アンド ヘア


バーク アンド ヘア [DVD]

バーク アンド ヘア [DVD]


監督がジョン・ランディスだとは知らなかった。生きる者も死せる者も等しく間抜けな、ごきげんな内容。カメラが引く前から、場面が替わる前から分かるギャグ、樽はどこまでも転がっていくし、死んだと思ったやつは絶対生きてるし、兵隊の一人は必ず倒れる、お約束の数々が楽しく、声出して笑ってしまった。
しかし終盤は陰鬱に。実話が元だからというより、マクベスを絡めて「愛のため」なんてことにしちゃうから、ひいてはバークと恋人とのくだりがつまんないから(大体なんだよあの女!いけすかないな!笑)、そうなっちゃったのかな。でも最後の「本物」で全然挽回!


元になっているのは、19世紀初頭に「医学の中心地」エジンバラで起きた「バークとヘア連続殺人事件」。たまたま少し前に「世にも奇妙な人体実験の歴史」を読んだこともあり面白さが倍増(「バークとヘア」についてもちらりと触れられてる)。冒頭から「あの墓泥棒はいい加減なやつだから…」というセリフにうなずけるし(笑)


世にも奇妙な人体実験の歴史

世にも奇妙な人体実験の歴史


当時の大真面目な「医学」も、今の目で見ると、たんなる素人視点であれ、どうしたって面白いものだ。バークとヘアのおかげで死体が潤い、「今日は四体も解剖できる!」「うぉーっ!」と学生達の大歓声があがる場面や、踏み込まれ標本を見られ「誰がやった!」と言われた博士が誇らしげに「私です!」と胸を張る場面なんて、実際どうだったのか分からないけど、可笑しくてしょうがない。
「太陽を使って物事を永久に残す」=「写真」の発明時の姿が見られるのも興味深いし、その他の有名人ネタも楽しい。ラストの「あの人」には「シャンハイ・ナイツ」を思い出してしまった(笑)歴史に詳しい人が見れば、もっと色々小ネタがあるのかも。


バーク(サイモン・ペグ)とヘア(アンディ・サーキス)は、当時のそうした「最先端」とは「死体と金」のやりとりで繋がってるだけ。「ガマの油売り」的に登場するも、すぐサギがばれ、汚物をかぶる。ちんけで愛らしい二人組。
ヘアは妻(ジェシカ・ハインズ)の酒癖に触れられると「女房のことを悪く言うな!」と怒り、バークの方は酒場で「女優」のジニー(アイラ・フィッシャー)に一目惚れ。明らかに「美女」の役なんだけど、彼女がテーブルに上り一席ぶっても周囲の客もヘアも知らん顔、ただバークだけがとろけてしまうというのがいい。彼女たち二人が、「仕事」について知った時、「なんてロマンティックなの!」じゃないけど(笑)彼らの想像とは全く違った反応をするのも面白い。
医学界の面々、昔気質のモンロー博士(ティム・カリー)と新世代のノックス博士(トム・ウィルキンソン)の嫌味っぽくねちねちした対立も楽しい。クリストファー・リーなんて大物もワンシーン出演してる。


ちなみに「アルゴ」と「バーク アンド ヘア」には、「実話を元にしている」「首吊り」、そして最後に「本物」を見せるという共通点があった。私としては、「本物」勝負は後者が全然上!