サボタージュ



オープニングは女が拷問されている映像、それを見ている老いた男。この男が「シュワちゃん」だと一瞬分からなかった。凄惨さに手で目を、口を覆う。8ヶ月と幾らか経った終盤にも彼が同じものを見る場面が挿入されるが、もう顔は覆わず酒と葉巻を口にする。キャロライン(オリヴィア・ウィリアムズ)が死体を発見した後に(普段は口にしないであろう)煙草を吸い、とある事実を知った後に酒を飲むことから、この映画においてはそういった嗜好品には「そういう意味」があるのかなと思う。


冒頭の一幕で便器に一杯の糞、その後の一幕でボトルに一杯の小便。どちらも何もそんなに満タンにしなくてもいいのにと思う。糞には金がつき、小便の傍には朝食が差し出される。そういうものと隣り合わせのやつらの話。
終盤のカーチェイスに巻き込まれ即死した「市民」のカットには驚いた、あんなの見るの初めて。人の行為によって人が死ぬということを誠実に見せる一つのやり方だと思ったけど、それなら「犯行後」だけじゃなく「犯行時」をわざわざ挿入するのはなぜだろう、単にもっと血を見せたいという気持ちもあるのかな、とも考える。
「ブリーチャー」ことジョン(アーノルド・シュワルツェネッガー)の指揮する特殊部隊の一員「モンスター」(サム・ワーシントン)は、謹慎中の自分達について「もうチームじゃない、ギャングだ」と言う。麻薬組織を摘発するという仕事をしていないと、すなわち殺しまくっていないと「チーム」が保てない。だからやり続けるしかない。数ヶ月ぶりの「訓練」の様子には、実際の所は知らないけど、色々な映画と比べて、えっこんな素朴なことしてるの?と思わせられる。訓練よりも実戦で力を付けてきたのだろうか。


本作を見に行ったのは、大好きなオリヴィア・ウィリアムズが目当て。本作の彼女は、シュワルツェネッガーとどこか「重なって」見える。黒々とした、後ろ髪を残さない頭。二人だけで銃を携え踏み込む場面が三度、いずれも死体を発見することになる。最初の暗闇のそれはダンスのよう(「手を取って」)。最後にはジョンがキャロラインの「クリア」を真似る。彼女は彼女で、当初(「(ひと時預けた)銃を返せ、信用ならない」と言われ)「こんな重いもの!」と返していたジョンの銃を躊躇無く手に取る。
中盤、キャロラインが部下にとある言葉遣いについて尋ねられ「あれは私だけのお気に入りの言い方、他の人も使うなら真似してるのよ」と言うのが印象的。そういう人間なのだ。ちなみにこの部下とのやりとり、とても「普通」で感じがよかった。
箸を使って中華料理を食べる姿にふと、「誰よりも狙われた男」でやはり黒いショートヘアにしていたロビン・ライトを思い出したけど、彼女が口元すらよく見せなかったのに対し、こちらのオリヴィアはカメラに寄りに寄られている。登場時から、シャツにスーツ姿にも関わらず(あるいはそれゆえ)何やら胸が目立つなあと思っていたら、「胸」の見えるシーンがあるので驚いた。何なんだろうね、そういう「予感」って。


ラストスタンド」にもそういう画が幾つかあったけど、「ボスがあの女に調べさせてるんだよ」の後のシュワルツェネッガーの葉巻を咥えたカット、イーストウッドにそっくりだった(笑)いや、イーストウッドなら「やらない」ことについての顔なんだけども。