トータル・リコール



公開二日目、TOHOシネマズ六本木ヒルズのスクリーンはほぼ満席。その中でポップコーン抱えて観るには、全然楽しかった。オリジナルより随分シリアス&ロマンチック。


コリン・ファレル演じる主人公は、わずかな通勤時間にも本を広げる。表紙のタイトルに字幕が付く…「007 私を愛したスパイ」。この世界で「(紙の)本」ってどういうものなんだろう?特に貧困地域では「普通」のものなのかな?
彼が警官隊の襲撃を振り切って帰宅し、妻(ケイト・ベッキンセイル)に「人、殺しちゃった!」と告げると「何よ、本で殴ったの?」と冗談で済まされるのが印象的。「あんたとこんな部屋に住んでさあ」というセリフがあることから、「読書するようなやつ」を少々馬鹿にしていることが分かる。彼は根っからの読書家なのか、それともそういうふうに「植え付け」られたのか、あるいは元は諜報部員だったのが「毎日同じことの繰り返し」になり「刺激」を求めるようになったのか、どういうことだろう?と考えた。


90年作のオリジナルでは、シュワルツェネッガーによる主人公は通勤電車内のテレビでリコール社のCMを見るが、本作の広告はラッピング式。大々的に宣伝してるのに、コリンがおそらく夜中に訪れる店舗は、随分「いかがわしい」雰囲気。原作についてはさておき、オリジナルが作られた頃は「違う自分になる」というのは「未来的」で無邪気な夢だったのが、今じゃあ幾分後ろめたいことと認識されてるのかな、などと思った。


「火星」ではなく「フォール」という設定や、「未来」の小道具はどれも面白いけど、例えばリコール社での一幕で警官隊が使う武器なんて楽しいのに、それを活かした展開にはならない…というように、頭がいいはずの主人公が随分もたもたしてる印象もあり。「妻」とのジャッキー・チェンばり(になるはず)の追跡劇もだらだらと長く、途中で意識が飛びそうになってしまった。
ビル・ナイ演じる反体制派のリーダーに魅力が無いのも残念。最後の闘いにおいてコリンが口にする「俺の心は今を生きる!」(過去が「真実」ではない)というテーマを言うために登場したようなものかな。
ケイト・ベッキンセイルジェシカ・ビールは感じが似てるので、どちらか違うタイプにして欲しかった。それにケイトは(妻の役なんて最低、の後に)シャロン・ストーンに倣って「あっちのほうはよかったけどね」と言うべき!まあとにかく、皆マジメな映画だった。