トガニ 幼き瞳の告発



韓国の聴覚障害者学校で実際に起きた、教員らによる生徒への性的虐待を題材にした作品。


私の思う韓国映画の特長を活かした、ある意味、娯楽映画でもあった。
最初と最後は音楽の雰囲気もあってか、ノワールの「匂い」。霧で視界を失った主人公のカン・イノ(コン・ユ)は車で動物を轢いてしまう。同時にクロスカッティングで、暴力による悲劇が示される。始まって数分で悪者が顔を揃え、主人公が被害者の証言を得、裁判へと流れ込む、テンポがよくて観やすい。
暴力シーンは胸が痛むけど不愉快にはならない…という点で、同じく都会から離れた場所が舞台、弱者への暴力をテーマにした「ミレニアム」を連想した。また撮影中、暴力を振るう役の俳優と子役はどうコミュニケーション取ってたんだろう?と気になってしょうがなく、「映画の中の暴力」についてという点で、やはり韓国映画の「映画は映画だ」を思い出した。
中盤のクライマックスである被害者ヨンドゥの証言シーンには、一休さんかよ!と思ってしまった(笑)法律のことは分からないけど、意味を成さないように思える。「実話」なんだろうか?


職員室でイノに子どもの状態について訊ねられた同僚のパクは、ディスプレイから目を離さず返答し、自分たちの仕事についての話になって初めてこちらを振り向く。イノの母親は呼び出し音にすぐ応じない息子に向かって、部屋に入るなり「あんたも耳が聞こえなくなったのかい?」と言うようなタイプ、料理しながら話しかけてくる声の「耳障り」なこと。そして、「この町は男には楽しいですよ」と言っていた刑事のところに、人権センターで働く若い女性ユジンが抗議に行くという場面のいやらしさ(エロという意味ではない)。こういう場面がいちいち面白い。


それにしても、私は韓国映画に出てくる女性キャラクターって苦手なことが多い。本作のユジンの「男をおびやかさない範囲内」での元気ぶりとか、ああいうの、見てて辛い。