ハンター



公開初日、ミラノ1にて観賞。とても面白かった。


ハンター稼業のマーティン(ウィレム・デフォー)は、企業の依頼を受けてタスマニア島を訪れる。目的は、絶滅したとされるタスマニアタイガーの生態サンプルの採取だ。


冒頭は「仕事」の連絡を待つマーティンの様子。ipodクラシック音楽を聴き、湯船に全身を沈める。几帳面に並べられた洗面用具。パリに二週間居ようとも、観光には興味がない。
「いつも」の様に現地に赴き「ベースキャンプ」に到着するが、母と二人の子が暮らすその家の荒れ果てていること。父親は山に入ったきり行方不明。林業で生計を立てる村人達は、その父親を筆頭とする「エコ戦士」とは犬猿の仲だ。大学教授を装って仕事に取り掛かるマーティンも、仲間と看做され嫌がらせを受ける。


…という具合に、数々のオモシロ要素が落ち着いたテンポで紡がれて行く。「バーにやってきたよそ者」として手荒い扱いを受けるお決まりの場面に始まり、当初は村人たちが脅威だったのが、終盤には「エコ戦士」である一家の母親の方に不気味さを感じるのも面白い(思い返せば「理由」は無いんだけど、私はそう感じた)。
デフォーの引き金による「クライマックス」が二回、何を何のために殺すのか、全然違うけどどちらもいい。前者には心拍数が上がり、後者にはじんとさせられた。


孤高の男が、父親不在の一家に草鞋を脱ぐ。「家」での印象的な場面は二つ、まずは「パパなら直せる」発電機をマーティンが小さな息子に助けられながら修理し(この場面では作中唯一のユーモラスな雰囲気が流れる)、久々に電気が通じた時。電飾が点り、レコードプレイヤーからブルース・スプリングスティーンの曲が流れる。家に生気が戻り、母親がこもりきりのベッドから出てくる。その後マーティンはレコードをこともなげに消してしまう。
二度目は、父親が「科学者のウッドストック」を開かんと大木に取り付けていたスピーカーをこれもマーティンが直した時。今度流れるのは「マーティンの」音楽だ。子どもたちが出てきて踊る。


いわゆるアウトドアの描写はミニマムで、木で罠を作ったり、服を燻して着たり、寝たり食べたりという場面が少しずつ挿入される。私にはその仕事ぶりから彼の力量を推し量ることはできないけど、バーでの村人とのちょっとした場面や、きちんと整理された(冒頭の洗面用具を思い出させる)道具の様子などから、彼が「達人」であることが分かる。
ラストはまあ、そうなるだろうなと思ってた通りなんだけど、音を消した最後の場面にほろっとさせられた。