レア・エクスポーツ 囚われのサンタクロース



フィンランド映画祭で逃したのを、ヒューマントラストシネマ渋谷のレイトショーにて観賞。お馴染みの姿とは全然違う「本物のサンタクロース」に挑む少年と大人たちの物語。


普段見慣れた映画とは少々勝手が違うので、たまに放り出されたようになるのも含め(笑)なかなか面白かった。地域色と工夫でもって「エンターテイメント」を作り出してるあたり、数年前に公開された「築城せよ!」(感想)の新鮮さと面白さをちょっと思い出した。こういう映画にあたると嬉しい。


淡谷のり子ぽい省エネ顔の主人公・ピエタリ少年は、フィンランド北部の国境近くで父と二人暮らし。父親はトナカイ狩りとその解体で生計を立てている。近所の住民も同様らしく、始めの方にトナカイの囲い込み猟が出てくるのが面白い。
「本場」の素朴なクリスマス・アイテムも色々出てくる。サンタを恐れるピエタリは、アドベントカレンダーの「24」を、まずはセロテープで、しまいにはでかいホチキスで止めてしまう。最後の舞台となる工場の扉もでっかいアドベントカレンダー風なんだけど、皆は小さな扉からちまちま出入りしてるのが笑える。
父親が焼く、よく言えば素朴なジンジャークッキーも、朝食からおやつ、「ドーベルマンに投げて気をそらせる肉片、のようなもの」にと大活躍。小花模様のエプロン姿の父に向かって息子は「ママのと同じ味だ」。母親は亡くなったのか出て行ったのか…


中盤、ドライヤーを盗まれた仲間の「ここじゃローテクだけど、ロシアじゃ貴重品だぞ」というようなセリフ、先日「ラップランド・オデッセイ」(感想)でもフィンランド人とロシア人の関係を見たばかりだから面白かった。同じ国の映画を続けて観ると、そういう重なりの楽しさが味わえる。