白いトナカイ



アキ・カウリスマキが愛するフィンランドの映画」にて観賞。1952年、エーリック・ブロンベリ監督作品。
リーフレットによると神話が元だそうで、オープニングにそれを歌う曲が流れる。「生まれながらの魔女」の死までが語られるが、そうと分かって見ても悲壮感はない。魔女の性が現れている時には眉がトナカイのつのの形になってるのがいい(笑)犬も可愛く、楽しく見た。


フィンランドが舞台の「夏の夜の人々」の村のダンスに「サーミの血」の祭りを思い出したものだけど、この映画を見ると、やはりラップランドは「フィンランド」ではないのだと思わされる。「魔女なんてライフルで撃ってやる」と豪語する男が「南から来た奴には分からない」と言われていたけれど、あの「森番」はフィンランドから来たのだろうか。
「夏の夜の人々」と本作は、私としては「窓枠」つながりでもある。こちらも窓枠の出てくるショットがいい。その影が濃くなることで月がくっきり姿を現したと示される。あらがえず、一人寝のピリタは白いトナカイに変わる。


トナカイレースで競い合い皆から離れた二人がふと見つめ合い、「結婚しよう」となる冒頭からしばらく、トナカイと共にある愛の暮らしの描写がとてもいい。捕まえたはぐれトナカイにスキーをつけて群れの夫の元へ滑っていくあの多幸感たるや、どんなだろうと想像した。夫がトナカイを連れて留守にする時は、いつまでも、いつまでも、いつまでも見送る。
しかし彼女が、あたりをよく見渡して「祭壇」の存在に気付く、巨大なトナカイを精霊として崇めるその前に、幾人もがトナカイを生け贄にした跡がある、そこから変わってゆく。ここから繰り返される、「呪いのテーマ」とでも言うエキゾチックな曲が耳から離れない。全編に渡って音楽も素晴らしかった。



特集上映をコンプリートしたのは初めて。頑張った!(笑)単純なことだけど、アキがこれ、見て、好きで、選んだんだと思うだけでまず見てて楽しかった。アキにも映画館にもありがとう。