あなたの初恋探します



公開二日目、バルト9にて観賞。すごく面白いわけじゃないけど、楽しく観た。


韓国でヒットしたミュージカル「キム・ジョンウク探し」を演出家自身が監督したもの。
ミュージカルの舞台監督として忙しいジウ(イム・スジョン)は、初恋の相手にこだわり恋愛に消極的。業を煮やした父親(チョン・ホジン)は、ギジュン(コン・ユ)が設立したばかりの「初恋探し社」に娘を連れて行く。


「行き遅れ」の女と「30過ぎてフリーター」の男、世間に迎合できない二人の恋物語。女はやもめの父親から「結婚」を、男は既婚で子持ちの姉から「仕事」をせっつかれている。仕事で悲劇に見舞われたジウに、父親が「自分ばかり不幸面して、男手で娘二人育ててる俺だって大変なんだ、ラクな仕事に替えてさっさと結婚しろ」と追い討ちを掛けるのは、日本映画じゃあまり見られないハードな蹴り(笑)とはいえこれらの要素はあまり活かされていない。そのほうが気楽には観られる。


「お菓子は食べ尽くさない」「本は最後まで読まない」ジウにとって、「初恋の人探し」は恐怖でもある。確かに、初恋の人を「チャーム」として取っておきたい気持ちは分かる。
でも、とことん付き合うと腰据えたからこそ生まれるものもある。ジウとギジュンは始め反発し合っているが、小さな旅を経た翌朝には互いを気遣うようになる。自分に合う相手と関係を持つんじゃなく、関係を持った相手との仲を成熟させるというやり方だってあるのだ。
物語はほぼジウの立場がメインだけど、ギジュンの方も、「ネットで得た知識」に満足せず体感したいと思うようになったり、黄信号をすっ飛ばすようになったりと変化する。


「初恋の人」はどう描写するのかな?と思っていたら…まずは「手、唇、前髪」のアップに始まり(後にギジュンがカッコつける時に前髪をフッと吹くシーンがあるので、文化的に前髪が大事なんだと分かる・笑)、声、逆光の顔!これ以上は見てのお楽しみ、ということで書かない。ジウの当時の日記を読んだギジュンは、二人の一夜を「自分に置き換えて」想像したんだと思いたい。


コン・ユのファンにとっては楽しいだろう。頑固で潔癖症の迷惑なやつだけど、ボールを蹴ろうとしてすっ転ぶ、荷物を取ろうとしてぶちまけるなどのドジっ子ぶりや、日記をつける時の女の子ポーズ、うたた寝など色んな顔を見せてくれる。作中数度の「強引」シーンが、ああアジアだなって感じ。
日本人の冬ソナツアー?にヨン様役で借り出された彼が、おばさんにセクハラされるシーンあり(バスガイドとおじさんの描写にありがちなひとコマ)、こういうのはどうも苦手。他にも結構「日本」が出てくる。


残念なのは、ラブコメにしてはセリフも撮り方も少々ぎこちなく、とどめに主役の二人の動きがとろいので「軽快」な感じがしないこと。まあもっさりしたカップルの話なんだけど。
舞台監督である主人公の仕事の描写は楽しい。「ブラック・スワン」で言えばウィノナ・ライダー的な女優が出てくるんだけど、むしろのんびりしたこっちの方が「リアル」に感じられる。