127時間



公開初日、ワーナーマイカルシネマズ板橋にて観賞。近所の上映館より大き目のスクリーン、観客は半分ほどの入りと、ゆとりを持って観られたので、足を伸ばしてよかった。


原作のアーロン・ラルストン「奇跡の6日間」は既読。一人でロッククライミングに出掛けた青年が右腕を岩に挟まれ身動きできなくなり、127時間後にとある決断を下す。


オープニングは家を出るアーロン(ジェームズ・フランコ)の様子。ボトルに水を流し溢れさせ、電話が鳴るのを無視し、戸棚を探るも見つからないものはあっさりあきらめて出発。そこからのあれこれが極めて軽快にさばかれ、岩に手を挟まれた所で「127時間」とタイトル。


予告編に何度も遭遇してきたためか、あのシーンはこういうところに置かれてるのか、あのナレーションはこの場面のものだったのか(「一人旅、最高!」のセリフなど)、などと思いながら観た。本作に限らず私にとってダニー・ボイルの映画って何らかの集合体という感じで、楽しいんだけどぐっと迫ってこない。
印象的だった「oops!」のセリフが出てくるのは終盤、アーロンは既に憔悴し切っている。彼はカメラに向かい、テレビのトークショーへの出演という設定で一人二役で語りかけ、自分を鼓舞する(映画では「観客の笑い声」まで入る)。「司会者」の際には彼の顔がそのまま、「アーロン」の際にはカメラ越しの映像が流れる。
その他、イラつく自分の姿を録画し「客観的」に見ることで落ち着きを取り戻したり、自分の見ているものを撮って幻覚か否かを確認したりと、カメラを介して得られる「他者」の視点が彼を救う。


私がこういう筋書きの映画に求めてしまうのは、自分がし得ない体験、その時に人間、あるいは「誰か」はどうなるのかという率直な描写。例えばアーロンが「自分のこれまでの人生はこの岩に向かっていたのだ」なんて思い始めるあたりは、語弊があるかもしれないけどぞくぞくするほど面白い。でも本作では他にオモシロ場面が盛り沢山なので、こういう部分が目立たない。大体「岩に手を挟まれ動けない男」の話なんて、ダニー・ボイルなら幾らでも面白くできるに決まってる、面白くしすぎだろ!と思ってしまった(笑)


物語の最後には、何でも一人でこなしてきたアーロンが、幾度かの声にならない叫びを経て、とうとう「I need your help!」に到達する。女性や子どもに「先に行って助けを呼んでくれ」と頼み、水を奪い取りがんがん飲む。そうそう、大変な時には頼りまくらなきゃ!とじんとしてしまった。


映画ニュースで失神者が出たと報じられてた「痛い」シーンでは、終わると隣のおじさんがはあ〜っと溜めてた息を吐き出し、近くのカップルが外へ出て行った(たまたまかな?)。私自身は何ともなかった。そういうの苦手な人にダメか否かは、見てみないことには分からないから、何とも言えないな…