お家をさがそう



「どう、懐かしくなってきた?」
「それもあるけど、新鮮さを感じたいの、ここを見つけたって」
「わかるよ」



共に30代半ばのバート(ジョン・クラシンスキー)とヴェローナ(マーヤ・ルドルフ)のカップル。ヴェローナが妊娠6ヶ月を迎えた頃、近くに住むバートの両親から海外移住の計画を告げられる。育児の頼りのアテが外れた二人は、自分たちには「生活の基盤がない」と思い、アメリカに点在する知人を頼りに新天地を探しに出掛ける。


冒頭の「その言葉、遣わないって約束したでしょ」「いや、『正しく遣う』と言ったんだ」なんて会話が(自分を見ているようで)可笑しい。共に繊細で、少々勝手な部分はあれど思いやりを持つ者同士、一方が喜べばもう一方も喜び、一方が怒ればもう一方がなだめ、旅が続く。まだ見ぬ子どもを抱えた二人が、欲しくても子どもの出来ない夫婦、第三者としては「ただの人参ジュースじゃないか」と言わざるを得ない、妻に逃げられた夫などに出会う。
結末はしっくりこない気がしたけど、後になって考えると、二人、少なくともヴェローナが「何か」を再確認したんだろうなと思う。あの寂寥感に、約束された関係などないけれど、それでもやっていこうという意思を感じた。


残念なのは、私にアメリカの土地勘がないため、次々地名が現れても、どういう町なのか、どのくらい移動してるのか、さっぱり分からなかったこと。もっともあまり「ロードムービー」感はない。ドライブインに寄るなどの「道中」がなく「点々」、さらに風景より人間ばかりが撮られてるからかな。


ヴェローナの妹は、バートが席を外した際「彼はセクシーね、あなたは幸せ者よ」と姉に言う。「ステーキハウスが好き」な男の愚痴をこぼす彼女の心中が察せられる。
このシーンでは、電話中のバートの長い脛が目立っていた。オープニングも彼の「水かきのような」足…からつながる脛だった。私は男の人の膝下が好きなので、いいなと思った。


音楽で印象的だったのは、元上司の夫婦とドッグレース観戦の後で入った休憩処でかすかに流れる「Night Birds」。実際ああいう場所なら、久々に耳にすることができるんだろうか(笑)


最後に余談。「娘のことを考え同じ飛行機には乗らない」という夫婦がいる。でも例えば私と同居人の場合、子どももなく「意義」ある何かをしてるわけでもなく、ただ一緒にいることが目的だから、そういうのって意味がない。地震の後、そんなことを思ったんだけど、この映画を観て、そのことについてまた考えさせられた。人間関係も自身も変わる可能性は大だけど、今のところ、私は「一緒にいること」以外が目的の人間関係って築けないだろうな、というか拒否していくんだろうなと思う。そういう暮らしには辛い面もあるけど、自分がそうしたいなら仕方ない。それは諦めじゃない。