トゥルー・グリット


まさに「映画のための映画」、余計な心など全くこもってないところがいい。映像も素晴らしい。もっともコーエン兄弟なら、先月観た「シリアスマン」(感想)の方が全然好みだけども。
壮大な西部の風景が、どこか作り物めいて感じられた。ジェフ・ブリッジスマット・デイモンがその空気にぴったり合っている。


冒頭、まるで落語の「壷算」を思わせる、14歳のマティ(ヘイリー・スタインフェルド)と商人とのやりとり。彼女が出向いた裁判所での、保安官コグバーン(ジェフ・ブリッジス)と弁護士とのやりとり。どちらもうんざりするほど長い。旅に出れば出たで、コグバーンは喋りに喋る。ジェフの声がいい。その代わり?ラビーフマット・デイモン)はあまり口をきかず、のそっと現れたり消えたりする。
とても見栄えのする、高く吊られた死体目指して木登りするシーンや、雪の中で「熊」に遭遇するシーンなどの「いかにもコーエン兄弟」な見せ場は、真面目にやってきたからこのへんで…という感じがして可笑しい。


原作となった同名小説は未読だけど、69年のジョン・ウェイン主演版「勇気ある追跡」は観た。

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「映画的」に時間を扱っている今作に比べ、前作は「ここからここまで」を切り取っただけの牧歌的な作り。この物語については、私は前作の方がずっと好き。そちらでのマティは、自分を大人だと思っているが、女だとは思っていない、幸せな時期にある。本当に子どもなのだ。色々「調べて」自分の強みにするところも印象的。
今作の方が良かった点も幾つかある。私は映画における「荷物好き」…その荷物が間に合わせであればあるほどわくわくするので、前作には無かった「馬用のりんごを袋に詰める」場面なんて嬉しい。マティが何かというと口にする「弁護士」が、セリフ内の登場だけで、しっかりコーエン兄弟印のギャグになってるのも面白かった。