キングスマン ゴールデン・サークル



「ケンタッキーのマティーニ」を口にするエグジー、いや演じるタロン・エガートンの表情に、いやあ「イギリスのスパイ」そのものの顔になったなあ、受け継いだなあ!と思う。前日マックイーンが出てくる映画を見ていたもんだから、冒頭では、「大脱走」の、アメリカ人に「くたばれ!」と密造酒を振る舞われたイギリス人が「植民地に乾杯!」と返す場面を思い出していた。


(以下「ネタバレ」あり)


一作目もそうだったように、描きたかったのだろう一番の「夢」が浮かび上がってくる映画だった。今回はシャンパン(ジェフ・ブリッジス)の言う「法を犯しても人間だ」。私にはそれは、冒頭エグジーが駆け付ける旧友の誕生日パーティの席での、犬のJBを預かるの預からないのというやりとりにまず表れているように思われた。「おばあちゃんの世話」に「アレルギー」、人には事情があるのだから、預かれないからといって友達じゃないわけじゃない。そんなことで線引きはできない。


線引きをして外の者は殺すのが今回の悪役。ポピー(ジュリアン・ムーア)は麻薬を商売の種にしながらサークル内では許さないし、大統領(ブルース・グリーンウッド)も、「毎日20時間働きづめ」の首席補佐官(エミリー・ワトソン)が激務から麻薬に手を出せばすげなく「切る」。終盤、作中何度目かの「カントリー・ロード」に乗ってドローンが飛んでゆく映像は、私にはサークルを解かれたポピーの魂の帰還にも感じられ、大統領を訴える補佐官の会見のシーンが、この映画における一番の快挙に思われた。


チャニング・テイタムが出演というので話題になっていたテキーラが作中全く活躍しないのも、都合よく取れば「何もしなくても『仲間』」という意味でそれに通じる。更に都合よく取れば「最後のジェダイ」のポー的なキャラクターと解釈することもできる(笑)ちなみに有名人が出たと思いきやすぐ死ぬという(ZAZの…いやもっと前のがあるのかな)ギャグがあるけれど、本作ではチャニングよりエルトン・ジョンの方が出番が長いなんて!という意外性よりも、ケイン様の後任のマイケル・ガンボンが早々に死ぬのが笑える(さすがにあれは生きていないよね?)


実はスパイのお仕事として私が一番「ありそう」だと思ったのは追跡装置を仕込むくだりなんだけど、作中ではそれが一番ばかばかしく演出されているのも面白かった。妙に心に残ったのは、ロープウェイの管理室でのハリー(コリン・ファース)のやる気の無さ。現場じゃないから気が乗らないのか、自分にはどうしようもないことには力を使わないのか、あるいは単にああいう人なのか。よく分からない、ということがキャラクターに血が通っていないように感じられる結果に繋がる、マシュー・ヴォーンの映画を見ている時にままある瞬間だった。