ランナウェイズ


1975年。ダコタ・ファニングは双子の妹が男といちゃつくのにうんざり。クリステン・スチュワートは貯めた小銭で「男物」の革ジャンを手に入れる。彼女が舗道を駆け抜ける足元に「The Runaways」のタイトル、大音量で流れる「Wild One」…というオープニング。現状に少々苛立つこの二人、シェリー・カーリーとジョーン・ジェットを主役に、「元祖ガールズバンド」の誕生から終焉までが描かれる。



原作はシェリーの自伝。私はランナウェイズを「ジョーン・ジェットがいたバンド」としてしか知らないから、こんな経緯だったのか〜と思いながら観た。ロック一筋のジョーンに対し、シェリーが好きなのはボウイと自己表現であり「ロック」にこだわりはない。
クリステンの、ジョーンとそっくりなこと!歌もギターも上手いし、普段ほとんどお目にかかれない笑顔も見せてくれる(笑)ダコタについては元々いいと思ったことがないせいか、いまいちぴんとこず。ただし日本公演の場面は、撮り方もあって輝いて見えた。


映画は路上に滴る鮮血で始まる。「初潮を迎えた」シェリーは、「トイレットペーパーを股に挟んで、妹から借りたパンツでおさえる」。「女」であれば否応なしに降りかかってくる出来事に、とりあえずの対処をする(しかし、そんなんじゃ対処しきれないものだ)。またこのシーンから、彼女が「母親にあまり目をかけられていない」ことが推測される。
作中では主にシェリーとジョーンによる、「人目をはばからない」オナニーやセックス、おしっこなどの行為の描写が挟み込まれる。70年代を意識してるような撮り方や演じ手二人のため、小奇麗な雰囲気。
シェリーが「下着姿」で歌うことを決めたのが日本公演の最中だとは知らなかった。ジョーンの「なぜそんなカッコで?」という問いに笑って「(以前言われたことを踏まえて)ちんこで考えた」。映画の宣伝文句には「たった16歳でロック界に殴り込み」とあるけど、そんな歳だから出来たんじゃないかと思う。


プロデューサーのキム・フォーリー(マイケル・シャノン)がトレイラーにメンバーを集めて練習させるシーンが面白い。「男たちは女装して咥え合ってる、だから女の方は牙を向くんだ!」「男が女に許す居場所は台所か膝の上、ステージなんてとんでもない!」「客は女の子が頑張ってる姿なんて見たくない!」などと事実をつきつけてるんだかうさんくさいんだか、「フルメタル・ジャケット」的叱咤が続く。それにしても「女のリビドーの叫び」なんて、今聞くと間抜けな言い様だ。
近所の子ども?を使って「野次を飛ばす客に対応する練習」をしたり、ライブツアー中、クリステンがやなやつのギターにおしっこしたりするシーンが楽しい。私としてはこういうのばかりならいいんだけど、全体的に辛気臭いんだよなあ。この二人が主役なんだから仕方ないか。