アリス・クリードの失踪



冒頭、タイプが異なる二人の男が、淡々と、双子のように作業をこなしてゆく。店で一人があれを取ればもう一人がそれを取り、一人がカーテンを吊ればもう一人も吊り、一人がドリルを使えばもう一人も使う。車の運転席と助手席でしばらく黙っていた後、年かさのほうが「行くぞ」と声を出す。後で思うに、若い方が言わせているのだ。


「準備」を終えた二人はある女を車に放り込み、部屋に連れ込み、ベッドに拘束する。服を裂き、ジャージを着せ、顔に布を被せる。女は最大限がんばって暴れる。以降描かれるのは「三人の言動とそれによって変わってゆく彼らの関係」のみ、誘拐事件につきものの、身代金に関するやりとりや受け渡しの場面などはない。ソリッドな犯罪ものなのに、へんな言い方だけどあったかい感じがして、3人きりの登場人物をそれぞれ応援しながら観てしまった。役者も皆いい雰囲気。
「女が男によって被害に遭う」話って観るのがキツイ場合もあるけど、全くそういう感じはしない。性被害の有無は関係なく(例えば映画「ミレニアム」はレイプ描写があっても嫌悪感を覚えない)、作り手が、女をまずは人間として見てる感じがするからかな?シンプルな描写が、私にとってはよく転んだんだろう。
監禁描写に接すると、おしっこどうするの?と気になって仕方ないので、早々にその問題が取り上げられるのもありがたい。うんこがひっこんだ件はいまだに引っ掛かってるけど…


特筆すべきは、男が全裸でかっこよくふんばるシーンがあること。また、私の好きなツナギもの、しかもほぼ全編ツナギものじゃん!と思いつつ、男性二人とも特に好きなタイプじゃないのでときめきはなく、でも中盤うち一人が「色」を使うあたりで、不思議なものでやっぱりセクシーさを感じた。
予兆はありつつ、○○によりこちらの見方ががらっと変わるというので、ケイン様の有名作を思い出した。これは「ネタバレ」に近いかな?