ミレニアム2 火と戯れる女/ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士


最高に面白い。3作とも劇場で観られてよかった。
(前作「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」の感想


「過去のとある事件」を発端に出会った二人。「2」ではミカエルに協力して少女売春の実態を暴こうとしていた記者が殺され、リスベットに嫌疑がかかる。同時に彼女が国家機密に関わる存在であることが明かされる。「3」では彼女の口をふさごうとする組織と、ミカエルらリスベットを支援する者との対決が描かれる。



前作よりもひりひり具合は減ったけど、深刻なテーマ(原作第1部の原題「女を憎む男」)を下敷きにしながら、「2」では「志村後ろ」感をも味わわせるはらはら感(突如「ボクサー」が登場するなんて!)、「ドラゴン・タトゥー」の印象的な見せ方、二人が最後の最後まで顔を合わせないドラマティックさなどに魅了される。「3」では法廷での全面対決に向け、リスベットをめぐる人々が敵味方入り乱れみっちり動き回る。そして、俗な言い方をすれば「印籠」出すの分かっててどきどき楽しめる法廷での一幕、リスベットの確実な「変化」を見せながらもさらりと閉めるラスト。これぞ映画!って感じの面白さだった。


緊張感が持続する中、ミカエルの、不思議と「こいつ絶対死なないな」と思わせられる暢気さがいい味を出している。「3」では、その無邪気さゆえ周囲を傷つける場合があることも描写される(エリカが「尻拭い」するのが、毎度のことなんだろうなと思わせられる)。
「2」で買い物袋を提げたリスベットが歩く坂道からの眺めなど、ストックホルムの町並みも楽しい。彼女が終盤まで病室にこもりきりの「3」では、ルックス的にも一陣の風って感じの病院長が登場してほっとさせられる。


「3」のリスベットは重傷を負って入院中だけど、「1」ではミカエルと、「2」ではミミとのセックスシーンがある。いずれもリスベットが何らかの理由でやりたくなって、合意でもってする。リスベットと彼・彼女らは肉体関係を持つ「友人」である。会えばセックスするわけでもなく、他の人とセックスすることもある。生きる単位が個人であれば、セックスするから「恋人」というわけでもなく、また「恋人」「友人」のどちらが「上」「下」などない。
ちなみにミカエルとエリカは「不倫」の関係だけど、原作ではそれについて心情描写があるんだろうか?「2」で親戚に「結婚しないの?」と聞かれた彼の返答がよかった。


「2」の終盤、悪魔の小屋に続く暗い草むらを一人ゆくリスベットの小さな姿は、健気にも哀れにも見えない。この映画のテーマや作りは、そう感じることを拒否している。
3作通じて、社会のふとした所に現れる「女性問題」が端的に散りばめられている。「2」でミカエルと会話中の証人は通行女性をじろじろ見る。「3」でリスベットと初めて会見した検事は「あんなに小さな女性だとは…」と驚きの声をもらす。彼女が裁判で提出した証拠物件につき、陪審員の女性は思わずといった感じで進み出て「あなたはなぜこれを撮影したのですか?」と口にする。もちろん彼女に悪気はないんだろうけど、その根本にある「感情」こそ、「女性」を痛めつけてるんだよなあと胸が痛くなった。
また、「1」の事件関係者はじめ「ミレニアム」編集部、また病院や拘置所など、どこにおいても普通のおばさんが普通に存在してるのがいい。この「普通」さって、なかなかないものだから。


前作の感想の最後に「セリフ内の価格に日本円にして幾らというカッコ書きがついてて助かった」とあるけど、「2」「3」ではそうした但し書きに加え、リスベットが登場すると「リスベット(天才ハッカー)」、その後各人が登場するたびにテロップが付く。「○○(買春客)」にはちょっと笑ってしまった。