ディス/コネクト



SNSで起こった事件を切っ掛けに心の絆を取り戻そうとする人々」の群像劇。
宣伝に殆ど出くわさず知らなかったけど、アンドレア・ライズブローの今年の初劇場公開作(2012年の作品らしいけど)なので、出向いた甲斐があった。丹念に化粧を施した目のどアップで登場し、いつものように、いつもと少し違う顔を見せてくれた。アレクサンダー・スカルスガルドミカエル・ニクヴィスト(愛する「ミレニアム」のミカエル役)が「対峙」する場面にも興奮。


私にとっては、「こまやかな描写」をなるほど〜と味わうタイプの映画だった。シンディ(ポーラ・パットン)がチャットの相手に「会えるかも」と返すのは、夫デレック(アレクサンダー・スカルスガルド)からの「用事のため」だけの電話の後。少年ベンが階段を下りて服を脱ぐのは、「ジェシカ」の「気に障った?」とのメッセージの後。レポーターのニーナ(アンドレア・ライズブロー)は、「ポルノサイト」の出演者の少年カイルに姿を見せる前に髪を下ろし胸元を整える。元警官のマイク(フランク・グリロ)は「勧めないが、俺なら…」というセリフからして、そりゃあ最後にああするだろう。全て「辻褄が合って」いる。でもって「インターネット」がどうこうというんじゃない、全て「人間」の持つものだ。
「皆がスマホを手にしている」時世なら、「スマホを手にしない」人の描写もある。ベンの母親リディア(ホープ・デイヴィス)が食卓に一人残される場面がそうだ。「事件」の後に「真相」にこだわりPCに張り付く父親リッチ(ジェイソン・ベイトマン)と、「真相」などどうでもいいと息子「本人」に張り付く、常に毛布やら服やらを手にしている母親とのすれ違いは、これもまた、「インターネット」がどうというんじゃない。


「映画的」な…ケレンというより私には「作為的」に見えてしまう作りの一方で、映像は「ノンフィクションぽい」ため、男優達の魅力が生々しく伝わってくるのが楽しい。例えばアレクサンダー演じるデレックの行為を妻の視点で見る、特に車内からの場面など、馬鹿みたいだけど、自分がアレクサンダーのパートナーであるように感じられる(笑)またカイルがニーナに会いに来る場面では、彼の座り方に意表を突かれ心奪われる。一度目は彼のテリトリー(おそらくいつもの「溜まり場」)で、えっそっちに座るんだ、二度目は彼女のテリトリー(取材に使用するホテル?)で、えっそこから座るんだ、という。転がり落ちるような性急さと未熟さの相俟った顔付きが眼前にあるように感じられ、落ち着かない、ちょっと怖い気持ちになる。
フランク・グリロ演じる「マイク」(後半この名が他の人物の口から出るのが面白い)の、男性的魅力には溢れているが近寄りたくない、人を、少なくとも我が子を制圧するのに慣れた雰囲気も痛いほど伝わってきた。ジェイソン・ベイトマンについては、急な仕事で呼ばれた際の「心ここにあらず」顔が印象的だったかな(笑)


「詐欺」被害に遭うデレックとシンディの夫婦のパートが、おそらく一番シンプルに見えたためか、私には一番面白かった。二人は図らずも「共通の敵」を倒すという「生の実感」に向けて走り始め、「ラブシーン」で物語を終える。元海兵隊員のデレックが裸で腕立て伏せをするのは、いつもの習慣なのか、「決闘」を決めたからなのか、おそらく後者だろう。彼の口をついて出た軍での思い出に「そんな話を聞いたの初めて」と顔をほころばせ、彼が鼻の頭に汗を浮かべて言う「変態アニメでも見てたのかな」との冗談に作中一番ってほどの笑顔を見せるシンディ。
「笑い合う」と言えば、ニーナが自宅で先輩レポーターとセックスした後、間髪容れず「頼みごとがある」と言って大笑いされる、自分も笑う、というシーンがとてもよかった。うまく言えないけど、いいね、あの感じ。