アルゼンチンタンゴ 伝説のマエストロたち


「Cafe de los Maestros」(原題)と題されたアルバムのため、アルゼンチン・タンゴの黄金時代を作ったマエストロたちが一堂に会する。収録後に行われたコロン劇場でのコンサートまでを追ったドキュメンタリー。



アルゼンチンで大ヒットしたという「瞳の奥の秘密」(感想)を観たこともあり、そういやこれも上映してたっけ…とル・シネマに足を運んだ。
冒頭、巨匠の一人いわく「タンゴといえばカフェで聴くものだった」。原題を知らなかったのでそうなのかと思う。そしてとあるカフェに掲げられた「年を取る者と、若さを重ねる者とがいる」という誰だかの言葉。
睡眠不足もあり、眼鏡のずり落ちそうなじいさんたちが旧交を温めたり昔話を語ったりする前半はうとうとしてしまったけど、それも悪くない。ふと目を覚ませば、音の合間に、ごくごく普通に撮られたブエノスアイレスの街並みやカフェ、サッカー場、競馬場などが映っている。マエストロは「酒と女にかまけてなくしてしまった」と、昔のレコードを聴いて楽譜を起こしている。


巨匠によれば「タンゴとは、楽団、客、ダンスの3つによって成立する大衆芸能」。
私はタンゴの知識は皆無で、ピアノとブラバン所属の経験はあるから、この映画では、タンゴの主役であるバンドネオンが最も「接したことがない」楽器として気になった。おじさんたちが最前列で、足並み?揃えて弾いてる様子が可愛い。分解して掃除するシーンや、本番前にじゃばらを動かさず運指だけ練習してるシーン、尊敬する先達の演奏について「こうじゃなく(四角四面に)こうなんだ(情感こめて)」と弾いてみせるシーンなど面白かった。
とはいえピアノの音色にはやはり惹かれる。ちなみにピアノはタンゴにおいては「指揮者のようなもの」だそうで、指揮者がピアノ奏者を兼任しているのが新鮮。
終盤のコンサートシーンでは、へんな言い方だけど、「演奏が上手い」ってどういうことだろう?と思ってしまった。彼らは職人の集団のように見えた。とても高揚させられた。


ビルヒニア・ルーケの歌には心が震えた!冒頭彼女が口にする「男にささやかれる名前と沈丁花の咲く庭を持つ、私こそがタンゴ」というような詩がよかった。何かの歌詞なのかな?