アイスバーグ!/ルンバ!



ベルギーの道化師夫婦、ドミニク・アベル&フィオナ・ゴードンの長編映画第一作「アイスバーグ!」('06)と第二作「ルンバ!」('08)が、TOHOシネマズシャンテにて同時上映。休憩入れて3時間超の幸福。


アイスバーグ!」は、氷山に魅せられた女が家庭を捨てて旅に出る…というあらすじからはイメージできないけど、主に荒海を舞台に、カップルが出来上がるまでのお話。
主人公「フィオナ」が畑のキャベツにじょうろで水をやっている、次のシーンでカメラの角度が変わると、その畑がやたら広い!これこそ映画のギャグの基本だよなあと(勝手に思って)嬉しくなる。そうしたミニマムなギャグの他、固定されたカメラの中で人物が出たり入ったり、動き回ったりというシーンが多い。まるでよく出来た箱庭を幾つも見るような…スクリーンという枠の中に、丁寧に作られた「場面」が、足取り軽く歩くような速度で次々と現れるのを味わう快感。
出演してるのが「道化師」だから、身体の動きそのものが楽しい。パンフレットに「チャップリンキートンを思わせるサイレント映画の復活」とあったけど、そもそもそうした時代の映画スターはそうした力を持っていたんだろう。スクリーンの中のフィオナの身体を、時には目を見張る観客として(ベッドのシーツで作る氷山の斬新さ!)、時には自分を彼女に置き換えて(船上で波に揺られる楽しさ!)楽しむことができる。


「ルンバ!」は、ダンスを愛するカップルが、交通事故を切っ掛けに不幸の連鎖に陥り、最後に愛を復活させるまでを描いた喜劇。
冒頭、前作の静けさを打ち破るかのように、教師役の「フィオナ」が子ども相手にべらべら喋り出す。窓の外を跳ね回る体育教師役の「ドム」。前作より数段カラフル(目に映る色合いも、比喩的な意味としても)になっている。ルンバに合わせて二人の暮らしを見せるオープニング、小洒落たインテリア、ギターに合わせた歌、可愛いわんこ、美味しそうなパン。ダンス大会で賞を取る場面の鮮やかなこと。ドムがフィオナの病室に入る際のギャグのキュートなこと。二人の夢のダンスの軽やかなこと。
事故によりフィオナは片足、ドムは記憶を失くし、それぞれ目に見える欠損が生まれる。そこから生まれるダイレクトなギャグの数々が楽しい。


壁のない「家」にわざわざドアから入るというギャグには、ドリフの刑務所コントを思い出してしまった(志村けんの囚人が、横っちょから檻の外に出られたのに戻ってきて牢破りに励むやつ)。当たり前か、不偏のギャグだもの。