SRサイタマノラッパー2



前作は観てないけど、予告編に遭遇して、どんな映画かな?と興味を持った。


冒頭、自室で寝ている主人公アユム(山田真歩)が父親に起こされる。「かっこいい女になる」という壁の標語と裏腹に、貼りっぱなしでかぴかぴになったフェイスマスク、スナック菓子の袋をかたむけても中は空っぽ。仕事は父と二人のこんにゃく工場。そこへ祖母がやってきて、食べたはずのごはんをねだる…という描写。ポップな「腐り方」。ああいう環境でも、部屋きれいにして、セックスして、のんびり楽しく暮らすことだってできるじゃん?と思ってしまった。


かつてヒップホップグループを結成していた5人が10年ぶりに集まるも、とある出来事がきっかけで再び亀裂が生じる。アユムは他のメンバーから、当時の曲について「こんなの、もう歌えない」と言われるんだけど、その歌詞というのが「うちらにはキラキラの未来がある!」みたいなやつ。私が高校生のころ音楽やってたら、あんな歌詞書かないよなあ、と思ったけど、そんな私だから、音楽とか、やらないんだよな。彼女たちは、そういうことを言いたくて、ラップしてたんだよな。ちなみに最後に流れる「今」の彼女の詞も、全然ぴんとこなかった。まあ「老いに負けずにがんばるぞ」的な女子の自虐精神が、一般的には可愛いと思われるんだろう。
終盤、行き詰まり、尊敬する「タケダ先輩」の前でつぶやくアユムの横顔のアップ。「将来は、友達たくさん作ったり、外国行ったり、してると思ってたのに」「ライブできなくてごめんなさい」。彼女が抱いていたのは漠然とした夢。それってきっと、よくあることだろう。


…なんて、違和感はありつつ、楽しかった。10年もの空白の後に、あんなにすらすらリリックが出てくるものかな?とも思ったけど、そのへんは「オーケストラ!」(感想)と同じようなファンタジーものなんだろう。途中やエンディングに一人歩きするアユムの姿に、歌うのが好きな気持ちが表れてて良かった。


アユムの仲間役の安藤サクラは「クヒオ大佐」に出演の…と言われても思い出せないけど、この作品ではとても良かった。登場時、ボロ旅館の座り机の前で、厚ぼったい靴下の裏がこちらを向いている。女5人が久々に「Bの部屋」に集まり(このシーンが一番好き!)、ほらほら!え〜?とかやってるうち、不意にラップを始める。プールでの営業が終わった際、文句は言いつつも「書き直さなきゃ」と前向きなことを言うシーンには、さすがの(女にはそんなこと感じない)私も、「このまま別れたくない!同じ家に帰りたい!」と思ってしまった(笑)