彼とわたしの漂流日記



とても楽しい作品。唐突だけど、今、くらもちふさこの漫画にいちばん近い「感じ」の映画を撮る監督はこの人だと思う。しかし媒体が違えば…漫画と映画じゃ「感じ」が似てても受け取るものは違ってくる。悪い意味じゃなく、同じ類の感動は受けない。


自殺しようと漢江に飛び込んだものの、大都会の中の「無人島」に流れついてしまった男(チョン・ジョエン)は、知恵を絞ってサバイバル生活を始める。一方、対岸のマンションで引きこもり生活を続ける女(チョン・リョウォン)が、カメラ越しに彼の姿を見つける。


「ヨコヅナ・マドンナ」(感想/とても面白かった)の監督作と知り観に行った。切れてしまった電話に向かってもしもし!と話しかける、「悪い女」はタバコを吸ってる、そんなベタながら鼻につかない描写の合間に、そうかも、と思わせられる瞬間が挟み込まれる。水に飛び込んだ男が見る幻想が、いかにもで楽しい。
遭難した人間が「顔」に話しかけるというので、トム・ハンクスの「キャスト・アウェイ」を思い出した。悲壮さは全く違うけど…


「自殺願望」と「ひきこもり」…前作の「ヨコヅナ・マドンナ」を考えたら、「社会に適応できない」人間を好んで取り上げるタイプの監督なのかな。しかし「ひきこもり」女性の顔に「あざ」がある、という設定は私には少し受け入れ難かった(「あのあざ汚いよね〜」というウェブ上への他人の書き込みがあることから、ひきこもった原因の一つであろうことが分かる)。そうした傾向の助長にならないかとおそれてしまうから。