50歳の恋愛白書


新宿武蔵野館にて観賞。平日の夜のためか、観客はまばら。


原題は「The Private Lives of Pippa Lee」=ピッパ・リーの私生活。原作・脚本・監督は、アーサー・ミラーの娘のレベッカ・ミラー。年上の夫とコネチカット州の高齢者地区に越してきた「良妻賢母」ピッパ(ロビン・ライト・ペン)の転機を描く。



大島弓子の漫画みたいな映画だった。夢遊病・薬・老人の町などの要素や母と娘のストーリーに加え、語り方だって、例えばピッパがライオンの夢を観てからタバコを買いに行くまでなんて、少女漫画を読んでるかのような感覚に陥った。


邦題や予告編からは、夫に「尽くし」てきた主婦が「裏切られ」、若い男と恋に堕ちる話…という印象を受ける。実際そういう内容だけど、単にそういう話じゃない。
主人公が、ある目的を持って結婚し「ピッパ・リー」となり、自分で自分を馴らしつつ暮らしてきたが、幾つかの切っ掛けにより、新たな選択をする。ピッパが現在の彼女に成ったプロセスを語るため、作中のかなりの部分が、若い頃の回想シーンで占められる。
観終わってみると、人間の単位は結局一人なのだ、あるいは、罪を償いつつも生き続ければ転機が訪れ得る、という話にも思えた。ピッパは、彼女にはからずも「罪のバトン」を持たせた人物が想像しない未来へ足を踏み出す。私なら最初から罪なんて背負わないけど…これは背負ってしまった人間の話なのだ。


回想シーンはそう面白いと思わなかったけど(80年前後?の時代性もあまり感じられない)、現在のパート…というかロビン・ライト・ペンの演技は見ていて楽しい。
結婚生活を嘆くウィノナ・ライダーをカフェで慰めつつ「結婚なんて簡単なものよ、ここにいる50歳以上の男の誰とでもできるわ」…その後、周囲のサンプルについて「対処法」を示していくシーンが可笑しい。何たってピッパは「順応」のプロなのだ。その後に買い物の話を持ち出してシメるあたりも、彼女の会話におけるテクニックが垣間見える。


ピッパと惹かれ合う、「嘘がつけない」「出戻り」男のキアヌ・リーヴスも良かった。昔と比べ少しだぶつき「大きな男」という印象を受け、現実の肉体を感じさせる。夫が老衰(に近い)死を迎えるのとは対照的だ。ピッパと彼との行為のシーンはリアルで胸にきた。
その他、やたら豪華な脇役(ウィノナを始め、ジュリアン・ムーアモニカ・ベルッチ)はともかく、若いピッパを演じたブレイク・ライヴリーや、彼女の娘と息子などがいい顔で頑張っている。


オープニングがロビン・ライト・ペンの顔のアップ、そのうちマスカラを塗り始めるので、先日観た「フローズン・リバー」(感想)と重なった。もっともロビンは美しすぎるけど…
それにしても、「恋愛適齢期」のダイアン・キートンにも思ったけど、50を過ぎて白い服を身に着けるのって素敵だ。彼女たちみたいに高価なのはムリでも、そうしてみたい(笑)


以下余談。
ピッパの娘を演じたゾーイ・カザン、いま調べたらエリア・カザンの孫だとは知らなかった。登場時にはむかっとさせられるのが(笑)母に抱きつく場面では涙が出そうになってしまった。口元がいいんだよなあ。
「旅するジーンズ」シリーズでおなじみ?のブレイク・ライヴリーの顔も結構好き。今月末公開の「ニューヨーク、アイラブユー」ではブレット・ラトナー編でアントン・イェルチンと共演するそう。結構楽しみ☆全然違うんだけど、私の中では、好きな女優のリサ・クドローなんかと少しかぶる。