ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女


シネ・リーブル池袋にて観賞。


原作小説は未読。盛り沢山な内容を楽しんだ。
扱われるのが「過去の事件」というのがいい(例えばクリスティでも「五匹の子豚」が一番好きだし)。ただし「推理もの」という感じではないし、「橋が不通になった孤島」という当時のシチュエーションもあまり活かされない。でも、解明のプロセスがとても映画映えするもので、小説ではどう書かれてたんだろう?と思った。



物語は事件解決ばかりに重きを置いているわけではない。
舞台はスウェーデン。雑誌「ミレニアム」の編集長ミカエルと、「ドラゴン・タトゥー」を背負ったリスベット(ノオミ・ラパス)の状況が、しばらく別々に描かれる。ミカエルは財閥会長に依頼され、40年前に起きた少女の失踪事件を調べるため孤島を訪れる。一方リスベットのパートでは、保護観察中の彼女が辛苦をなめさせられている様が示される。
ハッキングにより事件のことを知ったリスベットがとあるヒントを送信し、二人は顔を合わせる。彼等が協力し始めると、ミカエルが来た頃には一面雪だった島に春が訪れる。のんきな音楽と共に、ほんの束の間、あたたかい雰囲気が流れる。


原題は「女を憎む男」。リスベットのおそらく過去、現在、そして二人が追う事件、全てがそれによる暴力に侵されている。その描写は自然で観易い…というのも変だけど、誠実な撮り方に感じられた。
レイプされた後、がたがたの足取りで帰路に着き、タバコに火を付けるリスベットの姿がいい。彼女の「抵抗」…その場で自分を守るため、あるいは計画して…の仕方もとても自然だ。やれることをやれるだけやる。そもそも「女を憎む男」が人格を認めない相手に性欲を抱くこと(それが広義の暴力につながる場合)が問題なのだから、あの「仕返し」は、薬を使うなどしてリスベット自身も快楽を得るべきだと思ったけど、相手があれじゃあ難しいか(笑)
彼女の足元が結構もたもたしているのがリアルだし、体つきも個性的で楽しい。リスベットの他の女性達も、皆普通っぽくていい。


ラストシーンのリスベットの格好には笑ってしまった。原作もそうなのかな?ああいう土地に行くと、ああいう格好をしたくなるってことなのかな?


スウェーデンの寒々とした風景(島はもちろん、都会の駅の様子など)も見どころだし、列車が何度も出てくるのも楽しい。首都から遠く離れた土地が舞台なので、移動の際に使われるのはもちろん、ミカエルの運転する車と併走するシーンも、わざとらしいけど(笑)良かった。
字幕において、セリフ内の価格に、日本円にしていくらという注釈が付いてたのもありがたい。ああいうの初めてかも。