私の中のあなた


白血病の姉ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)に臓器を提供するドナーとして生まれた、11歳のアナ(アビゲイル・ブレスリン)。母サラ(キャメロン・ディアス)は「家族のために」と当然のようにその体を使用してきたが、ある時アナは、腎臓提供を拒むべく、弁護士を雇い両親を訴える。



母親が管理しようとしていたのは、意図的に産んだアナの体と心だけではなかった…ということに気付いた時の衝撃。自分の鈍さにショックを受けた。少し考えれば想像できることなのに、途中まで思い及ばなかった。ケイトが最後に母親にかける言葉に、あんな「よく出来た」子どもがいるだろうか?と思いつつ、涙がこぼれた。


映画は11歳のアナのナレーションで始まる。自らが生まれた経緯を語る際、「天国では魂たちが肉体に入る時を待っている」というようなことを言うので、これがアメリカの子どもの一般的な考え方なのかな?と引っ掛かったものだけど、彼女と姉がひなたぼっこしながら共に過ごす時間、交わすやりとりに、ああいう体験をしていれば、ああいう考え方をしても不思議じゃない、と思わせられた。


予告編から、裁判劇が話のメインかと思っていたら、全く違っており、ふとした拍子に各人が思い起こす家族の体験が、バラバラに積み重ねられていく。映像も音楽も心地よくて、趣味がいいなと思った。3分写真の場面には「出た!」と思ってしまったけど(笑)
裁判を起こす時点で、アナを含む子どもたちは、ある段階に来ている。物語は彼等のそれまでを描きつつ、そこへ到達していない母サラが裁判を切っ掛けに前進することで終わる。ちなみに父親とアナの兄ジェシーは、登場する女性たちを「動」とするなら「静」であり、もしケイトとアナが男兄弟だったら、どんな映画になったろう?と思わせられた。父親は結果的に「美味しいとこ取り」してるように感じられたので。


終盤、ケイトの病室に「祝日かトラブルのときしか集まらない」親族の数人が訪れ、「気の持ちようが大事」というようなことをしきりに言う。対する「ファミリー」のうんざりした表情が面白かった。こういうシーンのある映画っていい。
病院の先生や裁判長(ジョーン・キューザック!)のキャラクターや服装…ギター柄のネクタイや、バラが散りばめられた上着…も良かった。


ケイトとボーイフレンドのテイラーがパーティを抜け出すシーンに、「ラスト、コーション」を観た際、もうすぐ死ぬと分かっている相手とのセックスはどういう感じがするだろう?と考えたのを思い出した(感想)。さらにはこのように、自身と相手の死を互いに意識している場合は?この映画からは特別な感じは受けなかった(それがいい・悪いというわけではない)。
初対面の二人が「○○のテイラー」「○○のケイト」と病名をアタマに付けて自己紹介するくだりが、可笑しくも切ない。これが老人映画なら、病気もギャグにできようというものだけど…って、そういう感覚もおせっかいか。


ジェイソン・パトリックはますますおっさん化が進んでいたけど、その職業は消防士。アナが仕事場を訪れ、皆と一緒に食事をするシーンが羨ましい(笑)ちなみにその際、この間うちらがコストコで買った、でかい粉チーズ(コレ)が登場。これまでも映画に出てきてたのに、気付かなかったんだろうな。