グラン・トリノ


先週の平日、試写会にて観賞。前売り券ももらったので、2回は観られる。嬉しい。



感想を書こうにも、面白すぎて言葉がない…「サービス満点」とはこのこと。他の人はなぜこういう映画を撮らないんだろう?なんて思ってしまったけど、あらゆるジャンルの映画を作ってきたイーストウッドだから出来るんだろうな。
イーストウッド好きの同居人も感激しきりで「全作品を観直したくなった」と言っていた。


イーストウッドが演じるのは、朝鮮戦争に従事し、フォード社で働いた男。妻亡き後は、72年製のグラン・トリノと愛犬デイジーを友に一人で暮らしている。悪口を言い合う爺友達はいるが、息子や孫には敬遠されている。
毛嫌いしていたアジア系移民の隣人にひょんなことからなつかれた彼は、「男」の欠けた彼等の家庭を助けることとなる。


シンプルなストーリーでありながら、これまでのイーストウッド映画の総まとめといっていい内容。「絵」的にも、セルフパロディのような仕草の数々に加え、風呂に入ったり涙を流したりと結構珍しい画面も入ってて、とにかく贅沢。
「グルル…」と唸りつつ、いい匂いの春巻きに相好を崩す姿に笑い、「…That's me」のカッコ良さに照れ、「友達」を守るために相手をぶちのめす姿(ここの見慣れたアングルが最高)に、こんなにせつない暴力シーンは初めてだと感じて涙がこぼれた。


隣家のモン族の娘スーは、イーストウッドに助けてもらった帰りの車中で出自について話す。自宅でのパーティに呼んだ際には「してはいけないこと」(日本のそれと結構近いものがある)を手早く3つ上げてみせる。何度も同じことをしてきた、あるいは頭の中で繰り返してきたんだろうなあと思った。
彼女が弟のタオに(自分は指図するのみで)庭仕事をさせているのは、郷に入れば郷に…ということで、彼を「アメリカの男」にしたかったのだろうか(いわく「男は女みたいにうまく適応できないから」)。しかし最終的にそれが出来るのは、作中では、大人の男であるイーストウッドだけなのだ。


エンディングロールや、「グラン・トリノ」の映し方もセンスが良くてしみじみ感じ入った。ナンバープレートの画面への入り方まで良い。



「あなたはいい人ね…父はカタブツなの」
「俺だって古い男だ」
「でもアメリカ人よ」