チェンジリング


最後のテロップが、とても心に染みた。


何と言ったら分からない、またしても「こういうことがあったよ」という映画だった。イーストウッドなんだから当たり前じゃん、と思いつつ、とても嬉しい。
1920年代のロサンゼルスの街並、忙しい職場の様子、不意に訪れるホラー、市民の怒り(これがあっさりしてるのがいい!)、少年の話を聞く警官のタバコから落ちる灰、同時進行する聴聞会と裁判、ある「悪人」の死、その後に主人公の身に起きる出来事…全てがしっくりきている。



印象的だったのは、聴聞会の日に、クリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)を迎えに来た牧師(ジョン・マルコヴィッチ)と彼女がやりとりするシーン。窓辺に立つクリスティンに、牧師は「息子さんも、あなたが新たな一歩を踏み出すことを願っていますよ」「違う世で息子さんに会ったとき、あなたが心を尽くして自分を探してくれたことを知りますよ」などと慰撫するが、彼女はそれを受け入れない。しかし反抗するわけでも冷淡にするわけでもなく、ただ自分の立場と思いを口にして、二人で部屋を出るのだ。その関係、空気に優しいものを感じて、イーストウッドらしいなと思った。


予告編の段階では、今作のアンジェリーナ・ジョリーはぎすぎすして気味が悪いなと思ってたけど、入魂の演技に惹き付けられた。特に聴聞会に出席するあたりから後は見せ場だらけ。頬をひくつかせるなんて、意識的にできるものなの?(笑)
警察の面々や精神病院のスタッフも皆ぴったりはまっていた。


取り上げられている連続誘拐事件において、実際には性的暴行もあったようだけど、作中ではそうした描写はされない。またクリスティンについても、セックス的なものは一切描かれない(実際の行為に限らず)。彼女はストイックな聖女のようだ。
冒頭に流れる、母子の平穏な暮らし。クリスティンは息子のために生きている。それがあんなふうに事件に巻き込まれ、彼女自身が変化し、「生涯息子を探し続けて」死んでゆく…映画に描かれたより、その後の彼女の人生に興味が湧いた。