PARIS


ル・シネマにて観賞。面白かった。下の画像はロビーに貼ってある、セドリック・クラピッシュ監督の直筆サイン入りポスター。



ウディ・アレンはニューヨークでしか生きられない」と言ったのは本人だったか、村上龍か誰かだったか。「自虐の詩」の幸江は「あんたはここでしか生きられない」と「東京」を指し示される。ある町でしか生きられない人間がいる。今の自分もそれに近いと思う。
この作品の最後には「パリで気楽に暮らせるなんて幸福だ」というモノローグがあるけれど、一見気楽そうに見える彼等の中にも、よそに適応できる人間と、そうでない人間がいることだろう。そんなことをふと思った。


現代のパリ。病に冒され、外の人々を眺めてその人生に思いを馳せる青年ピエール(ロマン・デュリス)。街をゆくのは彼を気遣うシングルマザーの姉(ジュリエット・ビノシュ)、市場で働く男女(アルベール・デュポンテル他)、女子学生に恋をする大学教授、その弟の建築家…。
予告編から冬の群像劇、ということで「ラブ・アクチュアリー」パリ版のようなかんじかな?と思っていたら、通じるところはあったけど、もっと…キャラメリゼされたような、ちょっと何かを覗きこむようなかんじの作品だった。



映画はエッフェル塔からのパリの眺めに始まる。他にも何度か遠景が出てくるけど、そのたび、すてきだなあと思うと同時に、なんて狭い街だろうと思う。
作中描かれるのは、いわゆる「素顔のパリ」。道路工事やビル建設の現場、ゴミ収集の様子。遠くのエッフェル塔が霞んでいるときもある。
そしてラスト、青年の目を通して見るパリの名所の数々は、少し違ったふうに見える。


登場人物の普段着らしいファッションも面白かった。以前から思ってたけど、向こうでは男の人がジャケットの下にジッパーのついた服を着ていることが多い。
ジュリエット・ビノシュがワンシーンだけ見せる、キャスケット(でふざける)姿も可愛かった。フランスの大女優つながりで、今年は「DISCO」でエマニュエル・ベアールキャスケット姿も見たっけ。私の好みとしてはビノシュのほうが可愛い(昔より断然良い!たとえ頭が「サラダ菜のようにぼさぼさ」でも・笑)


街角のパン屋のたたずまいは、「赤い風船」に出てきたお店を思い出させた。でもって偏見の激しいマダムを演じてるのは…見たことあるけど、誰だっけ?沢口靖子ぽい、目を見開いた演技が可笑しい。フランスではバゲット、手づかみなんだよね。



「偶然に身をまかせるんだ、ぼくが保証するから」
   (今年劇場で聴いた、言われたら嬉しいセリフ・ナンバーワンかも)