DISCO ディスコ


冴えない40男がディスコダンスで奮闘…という、かなり今更感あるお話だけど、フランスらしいのんびり感が心地よくて楽しかった。
公開3日目、日曜の午後のシャンテシネは3分の1ほどの入り?主人公世代のカップルも多かった。



ノルマンディーの港町。失業中のディディエ(フランク・デュボスク)は故国に帰った前妻に息子を取られ、会うこともかなわない。一緒に暮らす母親は、その甲斐性の無さを責めるばかり。
彼にはダンストリオ「Bee King」としてフロアを席巻した過去があった。町にディスコを開いたジャクソン(ジェラール・ドパルデュー)は、友人を気遣いダンスコンテストへの出場を促す。優勝賞品が旅行券と知ったディディエは、息子とバカンスを過ごすため、仲間のヌヌイエとウォルターを呼び戻す。


ジェラール・ドパルデューの「80年代へようこそ!」というセリフからして、フランスのディスコブームは日本より少し遅かったのかな?それとも設定を変えたんだろうか。
映画の幕開けは(この曲が流れればどうしたって胸がしめつけられてしまう→)「サニー」、コンテストの予選で使われるのは「ネバー・セイ・グッドバイ」、決勝戦に「セプテンバー」、その他流れるのはビージーズ(これのみ全てカバー)、既成曲以外のスコアはミシェル・ルグラン。なかなか気持ちよかった。
(ところで、ジャクソンの奥さんが連れてきた歌手は誰なんだろう?向こうじゃたぶん、出てきただけでお目出度いってかんじなんだろうなあ?)


舞台は坂の多い町。ディディエが母親と暮らす家は、長い長い階段の上にある。一度だけ挿入される夕暮れのシーンが印象的だ。それにしても、あんなディスコ、あんなコンテストが若者で大盛況だなんて、フランスってそうなのか、それともそういう町なのか、あるいはファンタジーなのか。
主人公ディディエを演じるフランク・デュボスクは有名なコメディアンだそうだけど、私は初めて見た。登場時、サングラス+白いジャージで町を歩く姿に、同行者が「クソの人(←うちでのビル・ナイの呼び名。「ラブ・アクチュアリー」から)の若い頃みたい」と言う。
田舎町で傷心を癒す元バレリーナ・フランスにエマニュエル・ベアール。ディディエの家を彼女が訪ねるシーンでは、ディディエのカットと彼女のみが映るカットとでは、まるで違う映画のよう(笑)ラフなダンススタイルが多かったけど、外出時の普通のジーンズ姿と、最後のパーティ姿がすてきだった。キャスケットを被ってるのが可愛い!
ちなみに終盤ふいに、へんな言い方だけど、彼女がやたら「フランス語」っぽく喋るシーンがあって面白かった。
トリオの一人、ウォルターを演じたサミュエル・ル・ビアンという俳優さんは、ジェイソン・ステイサムを無骨に&可愛くしたようなかんじで、「寡黙な肉体労働者」という役柄も相まって超タイプで惚れてしまった。腕の入れ墨がちらっと見えてるシーンがキュートすぎる。
(って今調べたら、観たことある映画に出てるんだけど、全然分からなかった…よそじゃ全然違うのかな)


主人公トリオやエマニュエル・ベアールのダンスシーンは、ばっちり決めたふうには撮られていない(ベアールは「8人の女たち」なんかのダンスを知ってるから、余計・笑)。ジェラール・ドパルデューも、彼が出る必要を感じさせないラフな演技だ。
加えて、唐突にアフロヘアのウィッグをつけたカモメが出てきたり(可愛いけど!)、ラストは「愛の風車」があんなことになったりと、観てる側にしてみれば思いつきのような場面が次々と挿入される。また例えば決勝戦の場面で審査員のミスなんとかがむすっとしているなど、リアルといえばリアルだけど、ハリウッドのダンスものなんかに比べたらずいぶんゆるい雰囲気。最後は不思議と、幸せな気分になった。



「次に登場するのは、地元ル・アーヴルからの挑戦者です!」