ベルサイユの子


シネスイッチ銀座では、主演のギョーム・ドパルデュー追悼で「ランジェ公爵夫人」「ポーラX」も上映しており、ポスターを観て、一瞬そっちに流れそうになってしまった。



ベルサイユ宮殿の森に暮らす、多くのホームレスたち。ある日辿り着いた親子が、ダミアン(ギョーム・ドパルデュー)の小屋で一夜を過ごすが、母親は仕事を求めて姿を消した。仕方なく彼は、残された息子エンゾの面倒を見ることに。


予告編からは「あったかホームレス生活」を描いた作品という印象を受けたけど、全然違ってた。しみじみ「フランス」っぽい映画。夜中にホームレス仲間が火を囲み「愛なんてものはあるのか?」などと話し合う場面は、上映前に流れた「サガン」の予告編とだぶってしまった(どっちもこんな会話、冗談まじりってこともある)。エンゾ役の男の子の狆っぽい顔が、サガンを演じるシルヴィー・テステューに見えた(笑)


冒頭に出てくる母子の路上生活(車の狭間で用を足す姿に、生理のときはどうするんだろう?と思った)をはじめ、それぞれの事情や暮らしぶりが簡潔に描かれる。タバコを吸う彼女の前を流れる川の水面、ホームレス仲間が還る「森」の暗闇など、「人」以外を捉えたシーンに、ふと惹かれる箇所が多かった。
起こる事の説明はほとんどなされないため、他の映画に比べて唐突な印象も受けるけど、皆が「自分の考え」に沿って行動しているだけなのだ。


ガタイのいいギョーム・ドパルデューはほぼ全編、ワークパンツ姿。ワークパンツを履いた男の人って大好き(というより肉体労働の似合う人が好き、というべきか)。小屋を作るのに、木の棒をぐるぐる結えつけるシーンに見惚れてしまった。そのポケットはいつも重そうにふくらんでおり、そっか、こういう人のための格好でもあるなあと思った(笑)



「許しや暖かさなんてもの、この家にはないんだ」
「お父様はそんな人じゃないわ…私たちは互いを選んだのよ」