かけひきは、恋のはじまり


ジョージ・クルーニー監督第三作。
日本版の予告編やポスターからレニー&ユアンの「恋は邪魔者」のようなラブコメをイメージしていたら、全く違っていたので驚いた。「変化の時代を生きる中年男」の話だった。
映画自体はスクリューボール・コメディ風に撮られている。古き良き時代の男同士のファイトや酒場での騒動、「風と共に去りぬ」を思い出させるキスシーン、ランディ・ニューマンの音楽。少々気恥しく感じる部分もあり、ジョージ・クルーニーって真面目な人なんだなあと思った。同行者は観終わっていい気持ちになった、と言っていた。



1920年代のアメリカ。40過ぎのドッジ(ジョージ・クルーニー)はプロフットボールチーム「ブルドッグス」の主力選手。しかしプロリーグの集客力は乏しく、チームは解散を余儀なくされる。そこで彼は「戦争の英雄」として人気を博す学生選手カーター(ジョン・クラシンスキー)を入団させようともくろむ。一方、「英雄」の暴露記事を狙う記者のレクシー(レニー・ゼルウィガー)も彼に接近していた。


プロチームが出来たばかりのアメフト界。炭鉱や農場出身の男たちは、試合後のユニフォームを移動中の汽車の窓の外に干す。ブルドッグス=ジョージ・クルーニーはラフでトリッキーなプレイを得意とするが、世間の認識の高まりと共に「ルール」が制定され始め、戸惑いつまずく。そしてラスト、フットボールを愛する彼の結論は…「楽しんでいこう」。
話が少しそれるけど、数年前に放送されたドラマ「美女か野獣」で、松嶋菜々子がテレビ局の敏腕プロデューサーを演じていた(今関東地区で再放送してるようなので思い出した)。ちらっと観ただけなんだけど、私生活を投げ打ってお偉方と近付きになり特ダネを得る「キャリアウーマン」の役柄で、とにかくぴりぴりしており見ていて辛かった。「かけひきは〜」のレニーは出世を目指す敏腕記者ながら、しごく自然で楽しそうで、そういう部分はハリウッド映画っていいよなあと思ってしまった。最後の試合時の記者席で、放送禁止用語を連発するシーンが可笑しい。


レニーは登場時、前回劇場で観た「ミス・ポター」の時より随分老けたなあと思ったけど、光る目に法令線も魅力的だった。やけに髪がぼさぼさな場面があったのは何だったんだろう?
ジョージ・クルーニーはいつも通り。まずはフットボールのユニフォーム姿、次いでスーツにレザージャケット、終盤にはパジャマやスーツのよれよれ版など色んな格好になるけど、コスプレ感や有難味が全くない。顔力が強すぎるんだろうか?
二人を含め、登場人物のファッションが飛び抜けておしゃれなわけではないのが、リアルで面白く感じた。
男の子の姿が多く挿入されるのも印象的だった。ちび版のスーツに帽子を身に付け、指示を受けて悪事の手助け(笑)をしたり、タバコで休憩したり。彼等はあの後、どんな大人になっただろう?


原題は「leatherheads」=当時のフットボール選手が被っていた、革製のヘッドギア(?)。ジョージのそれは、最後、バイクのサイドカーの座席に放り込まれ、二人と共に一本道をゆく。