敵こそ、我が友



「でも戦争だったんだ、今は終わった」
  (クラウス・バルビー)


「国や政府は、殺戮や拷問をするのに人間を使い、それらをやめるのに今度は別の人間を使う」
  (歴史研究家)


「リヨンの虐殺者」の異名を取る大物戦犯でありながら、戦後もヨーロッパやボリビアで活動を続け、「第四帝国」の建設を夢見た元ナチス親衛隊、クラウス・バルビーの生涯を描いたドキュメンタリー。
彼に関わった人々(肉親や隣人、インタビュアーなど)の証言や当時の映像が満載でとても面白かった。


銀座テアトルシネマにて、土曜の夕方の回は満員(15分前に行ったら最後の数席だった)。知らずに遭遇したんだけど、上映後に東京大学の教授によるトークショー?があった。以下、感想ではなくその記録。
歴史の専門家にとってはどういう部分が面白かったんだろう、と思っていたら、興味ぶかかった点として、1.アメリカ政府がバルビーをボリビアへ送る際、バチカンの極右派神父の手助けによる「ラット・ライン」を利用したとされていること。2.ジャン・ムーランだけでなくゲバラの暗殺に関わっていたと明確にされていること、などを挙げていた。
ちなみにバルビーの弁護を担当したのは、フランスでの通称「悪魔の弁護士」。出自もあり反植民地主義に立つ彼がが常に主張していること…フランス政府も同じことをやってきたじゃないか?という問題を喚起すること…は、確かに意義がある。
最後に教授は「あくまでも私の考えですが」と前置きしたうえで、「アメリカに利用されることで生き延びたという点では、戦後の日本に通じるものがある」と締めくくった。